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コラム

家の傾きは修復可能か?リフォームや解体費用の相場とによる放置リスクを詳しく解説

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家が傾いてしまうと、資産価値の大幅な低下だけでなく、居住者の健康にも悪影響を及ぼす恐れがあります。

特に、傾きによるめまいや体調不良などの健康被害は深刻な問題となり得ます。そのため、早期に原因を特定し、適切な対策を講じることが重要です。

本記事では、家が傾く原因、修繕方法、費用相場に加え、傾いた家の売却についても詳しく解説します。

家が傾く原因と調べ方

建物が傾いてしまう原因として、以下のように2つのケースが考えられます。

  1. 地盤沈下や土地の液状化が原因の場合
  2. 建物の劣化やシロアリが原因の場合

それぞれについて解説します。

地盤沈下や土地の液状化が原因の場合

出典:内陸でも液状化が起こる理由|日本経済新聞

地盤が弱い土地に十分な補強をせず建物を建てると、建物の重みで地盤が沈み、家が傾くことがあります。

また、地震の際に発生する液状化現象も傾きの原因となります。

液状化は、地下水が地表に噴き出し地盤が緩む現象で、特に埋立地や河川付近で起こりやすいとされています。

出典:震度7の地震で発生した「液状化現象」とは-ウェザーニュース

【修繕方法】

液状化などによって傾いた場合は、アンダーピニング工法(強固な地盤層まで杭を打ち込む補強工法)が有効です。この工法により、家全体を安定させ、再沈下を防ぎます。

アンダーピニング工法の詳細は、次の「家の傾きを修理する方法と費用相場」でまとめています。

建物の劣化やシロアリが原因の場合

土地に問題がなくても、長期間の劣化やシロアリ被害により柱や土台が腐食し、家が傾くことがあります。

特に築年数が古い家は、木材が腐朽して強度が低下し、傾斜が発生するケースが多いです。さらに、シロアリ被害は柱の耐久性を著しく低下させ、傾きを引き起こします。

【修繕方法】

建物の劣化やシロアリ被害が原因の場合は、比較的費用を抑えられる土台上げ工法が有効です。この工法では、ジャッキなどで建物を持ち上げ、傷んだ土台部分を補修・交換することで傾きを修正します。

傾きの調査をプロに依頼する場合の費用

リフォーム業者に相談する前に専門の業者に調査してもらい、家の傾きの原因と対策方法について説明を受けることをおすすめします。

専門業者に調査を依頼することで、傾きの原因や対策方法を詳しく知ることができます。特に、ホームインスペクション(住宅診断)は包括的な診断を提供するためおすすめです。

  • 費用相場: 7万円~15万円(30坪~40坪の一軒家の場合)
  • 調査内容: 傾きの原因特定、シロアリ被害確認、基礎や外壁など建物全体の状態診断

費用はかかりますが、早期発見・早期対策により、将来的な大規模修繕のコストを抑えることができます。

自分で傾きを調べる方法

プロに依頼する前に、自分で簡易的に傾きを調べる方法を紹介します。

  1. ビー玉やゴルフボールを転がす: 床に置いたビー玉が自然に転がれば傾きのサインです。
  2. スマホアプリを利用する: 傾斜角度を測定できるアプリが手軽で便利です。
  3. 水平器を使用する: 最も正確な方法ですが、100円ショップのものは精度が低いため、精度±2mm程度の水平器をホームセンターで購入するのがおすすめです。

家の傾きを修理する方法と費用相場

傾いてしまった家も、適切な修復工事を行うことで傾きを直すことが可能です。

修復工事は、家が傾いた原因や傾きの度合いによって施工方法が異なるため、状況に合った最適な方法を選ぶことが重要です。

修復工事の主な方法は以下の3通りです。

  • 土台上げ工法
  • ダブルロック工法
  • アンダーピニング工法

それぞれの特徴を解説します。

土台上げ工法

出典:株式会社エヌプラス四国

土台上げ工法は、傾きの程度が比較的軽い場合に用いられる方法です。

建物の基礎部分と土台部分を切り離し、油圧ジャッキなどで持ち上げて水平を調整した後、できた隙間をモルタルなどで埋めます。

工期と費用目安

  • 工期:1週間〜10日程度
  • 費用相場:100万円〜200万円

メリット

  • 比較的費用が安く、短期間で工事が完了する
  • 騒音、振動、埃が少なく、住みながら施工可能

デメリット

  • 地盤の補強は行わないため、再度沈下するリスクがある
  • 応急処置的な側面が強く、長期的な安定性は低い

ダブルロック工法

出典:工場床の沈下修正(コンクリート土間空洞充填)|曳家工事・沈下修正 我妻組

ダブルロック工法は、地盤に特殊な薬液を圧力注入して強固な支持地盤を作り出す工法です。

薬液は収縮しにくいため、将来的な再沈下のリスクが抑えられます。

工期と費用目安

  • 工期:3週間〜1ヵ月程度
  • 費用相場:300万円〜500万円

メリット

  • 傾き修正と同時に地盤補強ができる
  • 1mm単位での精密な調整が可能
  • 新たな支持地盤をつくることで効果が長期間持続する

デメリット

  • 比較的新しい工法であるため、施工品質が業者によって差が出やすい
  • 土台上げ工法に比べて費用が高額

アンダーピニング工法

出典:沈下修正の最上級工法!アンダーピニング工法を徹底解説|家の傾きは直せる!おすすめの家屋傾斜修正会

アンダーピニング工法は、建物の基礎の周囲を掘削し、鋼管杭を地中深くの支持層まで打ち込み、建物を新たな基礎で支える工法です。

大規模な施工が必要ですが、長期的な安定性が高いのが特徴です。

工期と費用目安

  • 工期:4週間〜6週間程度
  • 費用相場:500万円〜800万円(支持地盤の深さにより大きく変動)

メリット

  • 再沈下のリスクが低く、安定性が高い
  • 軟弱地盤でも対応可能
  • 施工後の保証が充実していることが多い

デメリット

  • 施工費用が高額
  • 工期が長く、大規模な工事が必要

費用に関しては強固な支持地盤がある深さによって大きく変わってくるので、リフォーム会社をしっかりと比較検討することをおすすめします。

自分で家の傾きを直すことは可能か?

家の傾き修正はプロでも高度な技術が必要な作業であり、特にダブルロック工法やアンダーピニング工法はDIYでは不可能です。

ただし、費用を抑えたい場合は、土台上げ工法を応用する形で自力で修正を試みることはできます。

しかし、その場合でも以下の課題があります。

  • 必要な機材: 油圧ジャッキを複数台(約10台)用意する必要がある
  • 技術: 正確な水平調整には専門的な知識が必要
  • 大掛かりな工事: 床を剥がすなど大規模な作業が伴う

保証や保険を活用する方法

新築時に付帯する地盤保証は、平均で10年間の保証が一般的ですが、30年間保証を提供する住宅会社もあります。

保証期間内での傾き発生であれば、保証を利用して無償で修復できる場合があります。

保険適用

  • 地震保険: 地震による傾きは保険金の支払い対象となることが多い
  • 火災保険: 雪害や風害など、契約内容により自然災害が原因の傾きも補償される可能性があります

傾いた家を放置するとどうなるのか

傾いてしまった家を放置すると、建物全体の構造に深刻な影響を及ぼします。

建物の重みによるさらなる傾斜の悪化に加え、わずかな地震でも倒壊のリスクが大幅に高まります。

特に、基礎部分が弱くなった場合は、地震の揺れに耐えきれず、一気に崩れてしまう危険性があります。

倒壊してしまう危険性はあるか?

地盤沈下が原因による家の傾きであれば、少しずつ沈下は進み、家の傾きはどんどんひどくなっていくだけです。

傾きがひどくなると、外壁などにも亀裂が入り、そこから雨漏りを起こす可能性もありますし、最終的には建物が倒壊してしまう恐れもあります。

体調不良や健康被害につながる可能性は?

傾いた家での生活は、人体にさまざまな悪影響を及ぼします。

建物の傾斜により平衡感覚を司る三半規管が乱され、自律神経が不調をきたします。

その結果、頭痛、めまい、吐き気、食欲不振、不眠などの症状が現れることがあります。 実際に、わずか数分間傾いた家に滞在しただけで、頭痛や吐き気を感じる人もいるほどです。

症状の出方には個人差があり、徐々に体調が悪化する場合もあるため、家族が体調不良を訴えたら、すぐに調査や修繕を検討する必要があります。

傾いた家は売却できるのか?

傾いた家であっても、売却することは可能です。

ただし、そのままの状態では建物の評価は大幅に下がり、売却までに時間がかかることが予想されます。

売却のポイント

  • 土地の価値を重視する買い手を探す: 建物ではなく土地を目的とする買い手もいるため、まずは不動産業者に相談してみましょう。
  • 複数の不動産業者に相談: 1社や2社だけでは買い手が見つかりにくいため、不動産大手6社が運営する「すまいvalue」や、「SUUMO」などのポータルサイトを活用し、広範囲に買い手を探すのが効果的です。
  • 買取専門業者に依頼: 一般の売却で買い手が見つからない場合は、買取専門業者に査定を依頼する選択肢もあります。市場価格より安くなりますが、現金化が早く、スムーズに売却できます。

詳しくはこちらの「マンション買取業者の選び方は?」の記事で解説しているので参考にしてください。

※記事のタイトルは「マンション」となっていますが、戸建てでも考え方は同じです。

解体を選択する場合の費用相場

傾いた家を売却せず、解体して更地として売り出す選択肢もあります。

解体費用の目安

一般的な木造2階建て住宅(40坪程度)の場合、解体費用は以下の通りです。

  • 1坪あたりの相場: 約5万円
  • 40坪の解体費用: 約170万〜200万円

近年はコロナ禍や国際情勢の影響により、建設関連の費用が高騰しています。そのため、インターネットで見かける坪あたり3万円といった安価な費用は現状に即していない可能性があります。

解体費用を抑えるポイント

  • 複数の解体業者から相見積もりを取る: 費用やサービス内容を比較し、最適な業者を選びましょう。
  • 補助金や助成金の確認: 自治体によっては、解体費用の一部を補助してくれる場合があります。

傾いた家を放置することで発生するリスクは多岐にわたります。安全性と資産価値を守るためにも、早めの対応を心がけましょう。

解体費用については「家の解体費用は?更地に戻す方法を解説」で詳しく解説しているので参考にしてください。

よくある質問

家の傾きに関して、今回紹介しきれなかった部分や、ネットなどで良く質問されている内容などをまとめてみました。

3センチ程度の傾きは問題ないって本当?

家の傾きが10/1,000というのは、1mあたり1cm傾いていることを意味します。

この傾きは、角度に換算すると約0.57度です。

一般的に、傾きが0.6度を超えると人体に悪影響が出る可能性があるとされています。そのため、3cmの傾き(10/1,000相当)は、修繕を検討すべきレベルです。

家の傾きはどの程度までが許容範囲?

  • 新築住宅の場合:傾きの許容範囲は3ミリ以下とされています。
  • 中古住宅の場合:許容範囲は6ミリ以下が目安です。

人体への影響を考慮すると、傾きが10/1,000(1mあたり1cm)は限界の目安ですが、理想としては6/1,000(1mあたり6mm)以下が望ましいです。

スマートフォンアプリで家の傾きを測定できる?

  • iPhoneの場合:「コンパス」アプリが標準でインストールされており、水平測定機能を利用して傾きを確認できます。
  • Androidの場合:無料の傾斜測定アプリが複数提供されており、手軽に測定が可能です。

まとめ

傾いてしまった家を放置すると、最悪の場合、倒壊する危険があります。

早めに専門家に相談し、原因の特定と対策を講じることが大切です。

住んでいない家の場合の選択肢

  • 早期売却:傾きが悪化する前に、不動産買取業者に売却する方法があります。
    • 傾きが軽微な場合は、そのままの状態で買取専門業者に相談するのが最も手軽です。
    • 査定は無料のことが多いため、「すまいvalue」や「SUUMO」などの一括査定サービスを活用して、相場を把握するのがおすすめです。
  • 更地にする選択肢
    • 傾きが深刻な場合は、建物を解体して更地にしてから売却を検討する方が買い手がつきやすくなります。

できる限り早めに査定を受け、売却や修繕などの対応方針を決定することをおすすめします。

マンションを貸す前に知っておきたい!契約から費用・税金の計算までの流れ

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「親からマンションを相続したら、自分は住む予定がないので貸し出したい」と考えたことはありませんか?

ここでは、法人が運用する「収益目的の一棟マンション」ではなく、個人が所有する「住宅用の部屋」を貸し出す場合に焦点を当てています。

マンションを貸し出す際には、収益面だけでなく、契約や管理においても重要なポイントがたくさんあります。トラブルを避け、安心して賃貸経営を続けるためにも、事前にしっかりと準備を進めましょう。

自宅マンションを賃貸に出すまでの基本的な流れ

自宅のマンションを賃貸として出す際は、主に4つのステップがあります。

それぞれの手順を詳しく見ていきましょう。

  • 収益や手取り額を試算する(収支シミュレーション)
  • 不動産会社と契約し、入居者募集を準備する
  • 入居者の審査を行い、賃貸契約を締結する
  • 入居後の管理業務や対応を行う

決めや手取り額を試算する(収支シミュレーション)

マンションを貸し出す際は、まず「どのくらいの家賃収入が見込めるのか」や「どの程度の費用がかかるのか」を試算することが重要です。

この収入と支出を試算することで、不動産投資でいう「利回り」というものを知ることができます。

📌利回りとは

投資金額に対する収益の割合を数値化したものです。

ローンの残債や管理会社への管理料、固定資産税などの支出に対しての収益(家賃)を計算することで、年間利回りを算出することができます。

【計算式】
利回り=(年間収入-諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100

今回は投資目的の物件ではなく、個人所有のマンションを賃貸するという前提なので、そこまで利回りにこだわる必要はありませんが、あまりに低い利回りでは手元にお金が残りません。

一般的な不動産投資であれば、利回り8%以上が理想と考えられていますが、これは地域によっても大きく変わるので、とりあえずは目安程度に考えておきましょう。

家賃相場の調査方法

家賃設定は、近隣物件の相場を調べることが大切です。

次のような方法で相場を調査できます。

  • 不動産会社に家賃査定を依頼する
  • インターネットで近隣の賃貸物件情報を徹底調査
  • 複数の不動産会社から見積りを比較する

不動産会社に査定を依頼する場合は、1社だけでなく複数の会社からシミュレーションを出してもらうのがおすすめです。 複数の査定結果を比較することで、より適切な家賃設定ができるでしょう。

今年は、オンラインの見積り比較サービスを活用することで、複数社の査定を簡単に比較できます。 例えば、「マンションナビ」などのサイトを利用すれば、物件情報を入力するだけで賃貸と売却の両方の査定を依頼できます。

不動産会社と契約し、入居者募集を準備する

家賃収入と経費の目安がつき、収支の目安が立ったら、次は不動産会社と契約し、入居者募集の準備を進めます。

不動産会社選びが賃貸経営成功の鍵

不動産会社は、入居者募集だけでなく、賃貸契約や物件管理などをサポートしてくれる心強いパートナーです。 ただし、不動産会社によって得意分野やサービス内容は異なります。

不動産会社を選ぶ際のポイント

  • 賃貸物件の掲載数をチェックする
    その会社が賃貸物件を多く占めているかどうかを確認します。 賃貸仲介の実績が豊富な会社は、入居者探しや管理業務に強い傾向があります。
  • 複数の会社に相談する
    地元の不動産会社だけでなく、全国展開の大手不動産会社にも相談し、対応や提案内容を比較しましょう。 大手不動産会社は集客力が高いため、入居者が早く見つかる可能性が考えられます。
  • 管理業務の内容と料金を比較する
    月額管理料金の相場は家賃の5%~7%程度です。契約内容や管理範囲(クレーム対応、家賃回収、物件巡回など)をしっかり確認しましょう。

管理会社の利用は必要ですか?

賃貸経営では、「不動産会社」と「会社」という言葉を管理する機会があります。

一般的な役割は以下の通りです。

  • 不動産会社:入居者募集、契約手続きの仲介を担当
  • 管理会社:入居後のクレーム対応、家賃回収、退去時立ち合いなどを担当

多くの場合、不動産会社が管理業務も兼ねることがありますが、別々に依頼することも可能です。

管理会社を利用せず、自主管理を行うこともできますが、クレーム対応や家賃回収などの負担が大きいため、初心者の方には管理会社の利用をおすすめします。

月々の管理料は各会社によって多少異なりますが、家賃の5%~7%くらいが相場です。

都心部だと管理専門の会社が複数ありますが、田舎の方になると不動産会社が入居後の管理までまとめて請負っているケースもよくあります。

まとめて一社に依頼してもいいし、別々に依頼してももちろん大丈夫なので、貸主が自由に選べます。

管理料や管理内容などを比較しながら、どの不動産会社に物件の管理を委託するか決めるようにしましょう。

なお管理会社を使わずに、オーナー自らクレーム対応や清掃などをする不動産は「家主管理物件」と呼ばれます。

この場合は月々の管理料はかかりませんが、クレーム対応や家賃回収などを自分でやらなければならず、かなり大変です。

夜中に「水道の水が止まらない」、「カギをなくして家に入れない」など連絡があることも…。

賃貸経営に慣れるまでは、管理はプロに依頼した方がよいと思います。

入居者審査と賃貸契約の締結

不動産会社が決まったら、いよいよ入居者の募集を開始するのですが、その前に決めておくことがあります。

地域や物件の状況に応じて、下記のような項目を決めていきます。

  • 家賃(管理費や駐車場料金を含めるか)
  • 敷金・礼金の有無と金額
  • ペット飼育の可否
  • フリーレント(一定期間無料)設定の有無
  • 契約期間および更新料の取り決め
  • 原状回復の範囲と負担条件

わからない点は不動産会社が詳しく説明してくれますので、理解できるまでしっかり説明を求めてください。

入居審査について

入居審査は自分で行うこともできますが、一般的には不動産会社や家賃保証会社に任せのが一般的です。

最近では、家賃保証会社を利用する物件が増えており、その審査が実質的な入居審査となることが多くなっています。

賃貸契約の締結

契約書は、通常、不動産会社が作成し、貸主と借主双方の合意の上で締結します。契約内容に不明な点がありますが、不動産会社にしっかりと確認し、納得した上で表明・押印しましょう。

入居後の管理業務と確定申告

入居が決まった後も、大家(貸主)としていくつかの対応が必要です。

  1. クレーム対応(水漏れ、故障設備など)
  2. 定期的な物件の巡回や維持管理
  3. 未払い家賃の督促や回収
  4. 年間の収支計算および確定申告

管理会社に委託する場合、クレーム対応や家賃回収はすべて任せることができます。貸主自身が対応すべき主な業務は、「収支管理」と「確定申告」です。

特に確定申告は、税金面での損益を考慮するため、毎年必ず行います。

よって、貸主としての大きな仕事は入居者が決まる前までであり、一番大事なのが「賃貸経営は準備と信頼できるパートナー選びが成功の鍵」ということになります。

管理会社を使わない場合は、入居者が決まったあともずっと対応に時間を取られますので、十分に考えた上でどちらにするか決めましょう。

マンションを貸す場合のリスクやデメリット

マンションを貸し出して家賃収入を得る事は、不労所得の手段として大きな魅力があります。

重要資産を見ず知らずの方に貸す以上、安易な気持ちで始めるのではなく、しっかりとメリット・デメリットを理解した検討することが大切です。

空室リスクによる損失の可能性

マンション賃貸で最も大きなリスクのひとつが「空室が続いて収益が得られないこと」です。

特に、住宅ローン返済中の物件では、空室期間が長くなるとともに利益が見込めず、家計を圧迫する恐れがあります。

さらに、管理費や固定資産税などの支出は空室中でも発生するため、結果持ち出しが多くなってしまう可能性があります。

また、築年数が古い物件や立地が悪い物件は、入居者がなかなか決まらず、空室リスクがかかります。

  • 家賃を周辺相場に合わせて適正に設定すること
  • リフォームや設備のリニューアルを行い、物件の魅力を高めること
  • 不動産会社と相談し、目標層に合った広告を立てること

このように、空室リスクをしっかりと見守って、無理のない賃貸計画を立てることが大切です。

入居者トラブル(クレーム対応・家賃未納など)

マンションを貸す際には、入居者とのトラブルも大きなリスクの一つです。

入居者からのクレームは、設備の不具合や近隣トラブルなど、さまざまなものがあります。

同様に、エアコンが故障した場合は、貸主が修理費用を負担する必要があります。 さらに、故障が深刻で修理が難しい場合は、新品への交換を求められることもあります。

このようなトラブルは管理会社であれば対応してもらえますが、最終的な修繕費は貸主負担となるため、修繕委託費用を見越して予算計画を立てておくことが大切です。

もう一つ大きなリスクは、「家賃未払い」です。

入居者が家賃を滞納すると、その期間は収入が途絶えることになります。さらに、家賃未払いの状態が続いても、すぐに退去させることは難しいのが現状です。

中には、退去時に移動費用を貸主が負担するように一時的にされるケースもあります。

保証会社を利用することで、入居者が一時家賃を滞納しても、保証会社が立て替えてくれるので、貸主の損失リスクを軽減できます。

簡単にはやめられない「借主優先」の契約リスク

入居者が数月間家賃を滞納していたとしても、すぐに退去させられるわけではなく、裁判を経なければいけないケースが多いのです。

相続したマンションについて、「とりあえず一旦貸しておいて、ゆっくり売却するかどうか決めればいいか」という話もよく耳にしますが、入居者がいる状況では売りたくても売れず、タイミングを逃してしまうこともあります。

このようなトラブルが嫌な場合は、入居者募集のハードルが上がりますが、「定期借家契約」という条件をつけることをおすすめします。

「普通借家契約」と「定期借家契約」の違いを理解する

賃貸契約には主に2種類の契約形態があり、「普通借家契約」と「定期借家契約」です。

それぞれの特徴を正しく、自分に合った契約方法を選ぶことが重要です。

普通借家契約とは

「普通借家契約」は、一般的な賃貸契約の形式で、2年や3年ごとに契約を更新するタイプです。契約期間満了後、入居者が住み続けることを希望すれば、貸主の一方的な都合では契約を終了できません。

定期借家契約とは

とりあえず、「定期借家契約」は、契約期間が満了すれば、原則として契約が終了する形式です。契約期間があらかじめ決まっているため、期間終了時には確実に退去してもらうことができます。

例、転勤期間の3年間だけ貸したい場合などは、この「定期借家契約」が最適です。

すごく単純な言い方をすれば、契約期間については、

普通借家契約 =借主側(入居者)の立場が強い
定期借家契約 =貸主側(家主)の立場が強い

と理解しおけばよいでしょう。

もちろん、貸主と借主の合意があれば、契約が満了したあとにそのまま再契約することも可能です。(※あくまでも再契約なので、更新や延長とはなりません)

貸主側としては、契約期間さえ終われば100%退去させされるので安心な契約ですが、借主側からすればまったく逆となるため、入居者の募集が難しくなるというわけです。

項目定期借家契約普通借家契約
契約期限制限なし原則1年以上
契約方式書面定め無し(口頭も可)
更新なし(再契約は可)あり

どちらがより自分にとってメリットが大きいか考えて契約方法を選びましょう。

どちらを選ぶべきか?

  • 通常借家契約は、長期で安定した家賃収入を得たい方に向いていますが、借主の保護が強いため、退去を求める際に手間がかかります。
  • 定期借家契約は、期間満了後は確実に退去してもらうため、期間限定での賃貸や、後に自分で住む予定がある場合に適していますが、入居者募集がやや真面目になります。

貸主側としては、「定期借家契約」のほうが安心感はありますが、その分、入居者が集まりにくくなる対処があります。契約形態は、自分の状況や目的に合わせて慎重に選びましょう。

マンションを貸す場合にかかる費用

マンションを貸すことで家賃収入が得られるのは魅力的ですが、そのため、貸主としてさまざまな費用が発生することも忘れてはなりません。

ここでは、マンションを貸す際に発生する主な費用について、丁寧に解説いたします。

貸し出し前の準備から、入居中、退去後まで、各段階でかかる費用をしっかり把握しておきましょう。

貸し出す前にかかる修繕費やリフォーム費用

マンションを貸す前にある程度の修繕やリフォームをしておかなければなりません。

特に築年数が古い物件ほど、修繕箇所が多くなり、費用がかさむ傾向があります。

例、次のような費用がかかります。

  • 壁紙(クロス)の張り替え:30万円程度(3LDKの場合)
  • 畳の表替え:1枚5,000円程度
  • ハウスクリーニング:3LDK〜4LDKの場合、7万円〜10万円程度

管理会社に支払う毎月の管理手数料

入居後の管理業務を管理会社に委託する場合は、毎月管理手数料が発生します。

管理料の相場と計算例

一般的な管理料は以下のようになります。

  • 都市部の管理費相場:家賃の5%〜7%程度
  • 地方の管理料相場:3%程度で請け負う場合もあり
  • 定額制の管理料:1部屋あたり1,500円など、パーセンテージ以外の契約も可能

例、月額家賃が10万円で管理手数料が5%の場合:

  • 管理料:月額5,000円、年間6万円の出費

このように、管理手数料は当面は固定費となるため、事前にしっかりと試算しておくことが大切です。

入居者募集のための宣伝広告費(AD費用)

入居者を募集する際には、不動産会社の間に広告を出すことが一般的です。

「AD物件」とは、貸主が不動産会社に対して、入居者を決めてもらった際の成功報酬として広告費(AD費用)を支払う物件のことを言います。

広告費を設定することで、不動産会社や担当営業者が優先的に物件を紹介してくれるため、空室対策として有効です。

広告費は、家賃1か月2ヶ月程度が一般的な相場です。

広告費が必要になるケースと不要なケース

  • 広告費が必要な場合:人気が低いエリアや築年数が古い物件など、入居者が決まりにくい物件の場合
  • 広告費が不要な場合:人気エリアや駅近など、入居希望者が多い物件

広告費は必要なものではありませんが、空室期間を短縮するための手段として検討しておくと良いでしょう。

退去時にかかる修繕費やハウスクリーニング費用

入居者が退去した後は、新たな入居者を迎えるために部屋を原状回復する必要があります。

この際、修繕費やハウスクリーニング費用が発生します。

基本状態回復は、入居者の故意による破損・汚損については入居者側が負担します。ただし、通常の使用による経年劣化や自然損耗については貸主が負担することが原則です。

そのため、退去時にもトラブルを覚悟するためにも、ガイドラインを事前に確認し、入居者との契約書の責任分担をしっかりと記載しておくことが大切です。

国土交通省 原状回復ガイドラインはこちら

その他にかかる費用(火災保険・固定資産税・確定費用申告など)

マンションを貸す場合には、上記の費用以外にもさまざまな費用が発生しますので、まとめておきます。

火災保険

火災や水漏れなどの万が一の事態に備え、貸主用の火災保険は必須です。保険料は内容や補償範囲によりますが、年間1万円〜3万円程度が目安です。

固定資産税・都市計画税

賃貸に出すとどうなるのか、不動産を全部している限り固定資産税と都市計画税が毎年発生します。

  • 固定資産税:評価額の1.4%(標準)
  • 都市計画税:評価額の0.3%(上限)

これらは大きな固定費となるため、事前資金計画に取り組んでいきましょう。

確定申告や税理士費用

賃貸経営によって家賃収入が発生する場合は、確定申告が必要になります。 初めての確定申告に不安がある場合は、税理士に依頼するのも良いでしょう。

  • 税理士費用:年間5万円〜10万円程度

家賃収入を得た場合の税金について

マンションを貸して家賃収入を得た場合、得られる税や住民税などの税金が発生するほか、確定申告も必要となります。

今回は、本業として不動産経営をしている方ではなく、転勤や相続などで使わなくなったマンションを貸す場合を想定して

いるので、「家賃収入以外に本業での給与がある」という前提で解説します。

不動産所得の考え方

マンションを貸すことで得た家賃収入は、不動産所得となり課税の対象となります。

不動産結果は、次のように計算されます。

不動産所得額 = 家賃収入 - 必要経費

例、1か月の家賃が10万円の場合、年間の家賃収入は120万円です。 ただし、この120万円がそのまま金銭対象となるわけではありません。 そこから、管理費や修繕費、固定資産税などの経費を差し引いた残りの金額が「不動産所得となります。

なお不動産所得は家賃だけでなく、以下のような収入も含まれます。

  • 共益費
  • 駐車場料金
  • 礼金(※敷金は含まない)
  • 更新手数料

例えば、家賃とは別に共益費や駐車場代を認めている場合は、必ず家賃収入と合わせて入れましょう。

不動産所得+給与所得で計算する

不動産所得は、給与所得と合算することができる「総合課税」となります。

例えば給与所得が年間500万円だとしても、不動産所得が50万円の赤字だった場合、「500万円-赤字50万円」で、年間450万円の所得と計算します。

この450万円に対して課税されるのが「総合課税」の考え方です。

収入から差し引ける経費項目

経費が多くなれば所得が減り、結果として納める税金も安くなります。

ですので、経費として認められる項目についてはしっかりと理解しておきましょう。

以下のようなものが経費として認められます。

  • リフォーム、原状回復などの修繕費
  • 火災保険と地震保険
  • 管理会社へ支払う管理料
  • 固定資産税
  • 住宅ローン金利
  • 入居者募集の宣伝広告費(AD費含む)
  • その他マンション賃貸に関わる雑費(清掃道具、交通費など)

これら経費を差し引いて残った金額が、その年の所得金額となります。

上記の経費はすべて領収書や請求書などの証拠書類を保管する必要があります。

所得税と住民税の計算方法

日本における所得税は「累進課税」なので、所得が多くなれば税率が高くなる仕組みです。

以下のように税率が定められています。

所得金額税率
195万円以下5%
195万円を超え 330万円以下10%
330万円を超え 695万円以下20%
695万円を超え 900万円以下23%
900万円を超え 1,800万円以下33%
1,800万円を超え 4,000万円以下40%
4,000万円超45%

例えば「サラリーマンの給与所得が500万円」で、諸々の経費を引いた後の「不動産所得が50万円」の場合、合計で550万となるので税率は20%です。

550万円x20%という計算なので、この人の所得税は約110万円となります。

正確にはもう少し複雑な計算になるのですが、大きな誤差はないので大体の目安と考えて下さい。

上記の場合、マンション賃貸で増えた所得税の額は「50万円×20%=10万円」となります。

住民税の計算方法

住民税は、得られる税のような累積所得ではなく、多くの自治体で「約10%」となっています。

  • 総所得:550万円
  • 住民税率:10%

この場合の住民税は:550万円 × 10% = 55万円(全体の住民税)

その中で、マンション賃貸によって増えた住民税は「50万円×10%=5万円」となります。

よって所得税と住民税を合算すると、

マンション賃貸で得られた税(10万円)+住民税(5万円)=合計15万円の税金負担

このように、不動産が増えれば、得られる税と住民税が同時に増加することを理解しておきましょう。

個人の場合は確定申告が必要に

サラリーマンが副業として家賃収入を得ている場合、毎年確定申告をしなければなりません。

ただし年間の家賃所得が20万円を下回る場合は、確定申告の義務はありません。

※上記は給与と家賃所得の2つしかないという前提です。もしその他の収入がある場合は確定申告が必要なケースもあります。

確定申告をすることで還付が受けられる可能性も

そのため、「20万円以下だから申告しない」のではなく、一度試算してみることをおすすめします。

マンションを売却するのと貸すのはどちらが得か?

マンションを売るか貸すか…多くの方が悩む点です。どちらが自分にとって有利なのか、状況や目的によって異なります。

結論からよろしくと、「将来的な使い道が決まっていない」場合や、「住宅ローンを完済している」のであれば、売却をおすすめします。

その理由は、売却は物件を手放した後は管理やトラブル対応の心配は不要ですが、賃貸の場合はクレーム対応や家賃未払い、空室リスクなどの問題が将来的にも続くからです。

特に最近は人口減少により空室が増加しており、日本全体で賃貸物件が残っている状況が続いています。 将来的な家賃下落や空室期間を考慮すると、売却の方がリスクが少ないと言えます。

単純な利益面では「売却」した方がお得

賃貸経営を始めた当初は、ある程度の家賃収入が見込めるかも知れませんが、時間経つうちに建物の老朽化や設備の劣化により、家賃を下げないと入居者が見れない状況になる可能性があります。

築10年、築20年と経過するうちに、周囲の新築物件やリノベーション物件と比較され、競争力を考慮して家賃を下げざるを得なくなることがある。

家賃下落の例

  • 築5年で月10万円の家賃が、築15年では月8万円に落ちる
  • 空室が続く期間が多く、年間収入が不安定になる

このように、長期的な視点で考えてみると、賃貸経営には予期しない損失が発生するリスクがあります。

メリット面での比較:「売却」と「賃貸」どちらがお得か?

実際に「売却」と「賃貸」を比較しながら、どちらが得しやすいのかを計算してみましょう。

売却した場合の利益シミュレーション

  • マンション売却価格:2,000万円
  • 仲介手数料など諸経​​費:100万円
  • 手取額(売却益):1,900万円

レンタルした場合のメリットシミュレーション

  • 月額家賃:10万円
  • 年間家賃収入:120万円(10万円 × 12か月)
  • 年間経費(管理費・積立金・固定資産税・管理手数料など):50万円
  • 年間手取収入:70万円(120万円 - 50万円)

比較すると…

売却益1,900万円をレンタルの手取り年間70万円で超えるためには:

1,900万円 ÷ 70万円/年 =約27年

以上のことを踏まえると、将来的に自分や家族が住む予定がない場合は、売却の方が有利な面でも、手間の面でも有利です。

特に、住宅ローンを完済している物件であれば、売却しても大きな現金を手元に残すことができ、資産運用や他の投資に避けるべき選択肢も広がります。

売却に関しては、こちらの「マンション売却で高く売るポイント」のページで詳しくコツを解説しているので、ぜひ参考にしてください。

マンション賃貸に関するよくある質問

マンションの貸し出しについて、よくある質問をまとめました。

なるべく高く貸すためのコツってあるの?

高く貸すには、他の物件と差別化することがポイントです。

例:

  • ペット可物件にすることで、希少性を高める
  • Wi-Fi無料、宅配ボックス設置など、設備を充実させます

ただし、ペット可物件は原状回復費が回復するリスクがあるため、敷金を豊富に設定するなどの対策が必要です。

貸主は仲介手数料を払わなくていいの?

不動産会社への仲介手数料は、宅建業法により「家賃の1か月分が上限」と決められており、一般的には借主が支払いケースが多いです。

「あなたのマンションを貸せば儲かる」ってチラシは本当なの?

「あなたのマンションを貸せば儲かります」
「あなたのマンションを高条件で借りたい人がいます」
「あなたのマンションを買いたい人がいます」

このようなチラシがマンションのポストに投函されていることがありますが、これは本当でしょうか?

多くの場合は、お客様寄せのチラシですので、安易に信じないようにしましょう。

「高く貸せる」「入居希望者がいる」といった文言は、不動産会社が査定依頼や管理契約締結のための宣伝であることがほとんどです。

住宅ローン支払中のマンションを貸してもいいの?

基本的に、住宅ローン契約では本人居住が条件となっているため、無断で賃貸に出すことは契約義務違反となります。

ただし、転勤など何か事情がある場合は、金融機関に相談することで「転勤貸し」などが認められることがあります。事前に必ず金融機関へ相談しましょう。

期間限定で家を貸すことはできる?

期間限定で貸したい場合は、「定期借家契約」を利用するのがおすすめです。

  • 定期借家契約は、契約期間が終了したら必ず退去していただく契約書です。
  • 一般的な「普通借家契約」では、契約終了後も入居者が希望すれば更新が可能となり、退去を求められません。

定期借家契約を活用することで、転勤期間だけ貸し出し、帰任後は自分で住むような柔軟な使い方が可能です。

まとめ

今回は、マンションの一室を貸し出す際に考慮すべき注意点やリスクについて詳しく解説しました。

当面の転勤など、期間が限られている場合は「定期借家契約」を活用することで、契約満了後のトラブルを回避しながらリスクを考慮することが可能です。

また、金銭的な収益面で考えると、売却の方が有利になるケースが多いです。賃貸の場合は、空室リスクや修繕費用、管理費などが継続的にかかるため、長期的な利益が圧迫される可能性があります。

さらに、少子高齢化が進む日本では、将来的に賃貸需要が減少し、物件が残ることが予想されています。そのため、売却を考えれば、市場価値が思い切って早めの決断をおすすめします。

「売るか貸すか」でお金を払った際は、賃貸と売却の両方の相場を比較できる「マンションナビ」などの査定サイトを活用し、実際のリアルタイムシミュレーションを行って判断すると良いでしょう。

資産運用を後悔しないためにも、バランスの試算と計画を入念に行い、自分にとって最適な選択をすることを大切です。

参考文献

国土交通省 – 原状回復をめぐるトラブルとガイドラインについて
国税庁 – 所得税の税率
「定期借家」と「普通借家」の違い – UR賃貸

不動産売却時、一般媒介と専任媒介ならどちらが有利?違いをわかりやすく解説

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不動産を売却する際、不動産会社と「媒介契約」を結ぶ必要があります。

媒介契約には主に3つの種類があり、その中でも特に多く選ばれるのが「一般媒介」と「専任媒介」、その他に「専属専任媒介」があります。

今回は、各媒介契約の特徴やメリット・デメリットをわかりやすく解説します。

一般媒介と専任媒介の違いとは?

媒介契約には、次の3つの種類があります。

  • 一般媒介契約
  • 専任媒介契約
  • 専属専任媒介契約
  • 一般媒介契約:複数の不動産会社に同時に依頼可能
  • 専任媒介契約:1社のみに依頼し、マンション売却を託す

媒介契約には3つの種類がある

媒介契約は「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」という3つの種類があります。

それぞれの特徴は以下のようになっています。

項目一般媒介専任媒介専属専任媒介
複数の業者へ同時依頼できるできないできない
レインズへの登録義務義務なし7日以内5日以内
自分で買主を見つけるできるできるできない
売主への状況報告義務義務なし2週に1回以上1週に1回以上
契約の有効期間特になし3ヶ月3ヶ月

この3つの契約内容を簡単にまとめるなら、以下のような特徴があります。

一般媒介同時に複数の仲介業者にマンション売却を依頼できる
専任媒介3つの契約の中でバランスが良く、多くの人に選ばれている
専属専任媒介業者側が一番望む契約だが、業者に有利な内容が含まれている

一般媒介にはレインズの登録義務がない

一般媒介と専任媒介における一番の違いは、やはりレインズへの登録義務です。

  • レインズ(REINS)とは?
    レインズは不動産業者専用の物件情報共有システムです。ここに物件が登録されると、全国の不動産会社がその物件を閲覧でき、買主が見つかりやすくなります。
  • 一般媒介はレインズ登録義務がないが注意!
    一般媒介契約では、不動産会社にレインズへの登録義務がありません。しかし、多くの不動産会社は一般媒介でもレインズに登録する場合が多いので、契約時に登録を依頼するのが良いでしょう。

媒介契約の種類によって仲介手数料は変わるのか?

結論から言うと、媒介契約の種類(一般媒介、専任媒介、専属専任媒介)によって、仲介手数料の違いはありません。

なぜなら、仲介手数料は法律で上限が決められているだけで、不動産会社は上限以下であれば自由に金額を設定できるからです。

2,000万円の中古マンションの売買であれば、上限は「売買金額の3%+6万円+消費税」なので726,000円です。

例えばA不動産は仲介手数料50%OFFというキャンペンを実施していた場合、726,000円の50%なので363,000円という場合もあるのです。

一般媒介のメリット・デメリット

一般媒介契約とは?

一般媒介契約とは、不動産を売却する際に、複数の不動産会社に同時に仲介を依頼できる契約形態です。

売主は自由度が高く、複数の業者に声をかけながら最適な取引先を選べることが特徴です。

一般媒介契約の主なメリットは以下の3点です。

1. 業者選びの失敗リスクが低い

複数の仲介業者に同時に依頼できるため、1社だけに頼る場合よりも業者選びのリスクを抑えられます。もし相性が悪い業者がいても、他の業者が売却活動を進めてくれるため安心です。

2. 物件情報をあまり公にせずに売却できる

一般媒介契約では、業者に「レインズ(不動産流通機構)」への登録を義務付ける必要がありません。そのため、売却活動を目立たせたくない場合は、業者にレインズ非掲載を依頼することで、販売活動をコントロールできます。

3. いつでも契約を解除できる

専任媒介契約や専属専任媒介契約は契約期間が3か月と定められていますが、一般媒介契約は期間の縛りがなく、いつでも解約が可能です。複数社に依頼しておいて、信頼できる業者が見つかったら専任媒介契約などに切り替える柔軟な対応が可能です。

一方で、一般媒介契約には以下のデメリットもあります。

1. 仲介業者のモチベーションが下がりやすい

複数社と競合になるため、業者は「広告費をかけても、他社が先に成約したら利益が得られない」と考えます。その結果、広告活動が抑えられたり、営業の優先順位が下がったりする可能性があります。

2. 宣伝広告が小規模になりがち

広告や宣伝に積極的になりにくいため、物件の露出が少なくなり、購入希望者の目に留まりにくくなる恐れがあります。

3. 販売活動の状況が把握しにくい

一般媒介契約では、専任媒介契約や専属専任媒介契約と異なり、業者に販売活動の報告義務がありません。そのため、売却活動の進捗状況や反響を把握しづらく、売却戦略を立てにくくなります。

一般媒介契約は仲介業者に好まれない?

一般媒介契約は売主にとっては自由度が高い一方で、仲介業者にとっては利益が保証されない契約です。

広告費をかけても、他の業者が先に買主を見つけてしまえば無駄になるため、積極的な売却活動が抑えられる傾向にあります。

どんな物件を売るのに適しているのか?

一般媒介契約が効果を発揮しやすいのは、需要が高く売れやすい物件です。

  • 築浅マンションや駅近物件:人気の高い物件は多くの業者が取り扱いたがるため、特別な宣伝をしなくても比較的早く売れる可能性があります。
  • 市場価値が明確な物件:同時に複数の業者が販売活動を行うことで、買主とのマッチングが早まります。

専任媒介のメリット・デメリット

専任媒介契約とは?

専任媒介契約は、不動産の売却を1社の不動産会社にのみ依頼する契約形式です。一般媒介契約と異なり、同時に複数の業者へ依頼することはできません。

専任媒介契約の主なメリットは以下の3点です。

1.バランスが良く、多くの人に選ばれる契約形式

専任媒介契約は「売主に有利な条件」と「不動産会社の積極的な活動」のバランスが取れており、多くの売主が選んでいます。

2.自分で買主を見つけることも可能

専任媒介契約では、売主が自分で直接買主を見つけることができます。この場合、仲介手数料がかからないため、費用を抑えられる可能性があります。

3.窓口が一本化され、対応がスムーズ

1社だけが対応窓口となるため、売却活動に関する問い合わせや進捗報告などのやり取りがスムーズになります。

4.売却活動の積極性が期待できる

不動産会社は専任媒介契約によって他社に取られる心配がなくなるため、広告活動や内見対応などに積極的に取り組みやすくなります。

5.レインズ(不動産流通機構)への登録が義務

専任媒介契約では、契約締結から7日以内に「レインズ」へ物件情報を登録する義務があります。これにより、広く買主を探す機会が増えます。

6.定期的な進捗報告が義務付けられている

不動産会社は2週間に1回以上、売主に対して売却活動の進捗状況を報告する義務があります。これにより、売却の状況を常に把握することができます。

一方で、専任媒介契約には以下のデメリットもあります。

1.不動産会社の実力に左右する

1社に任せるため、その会社の販売力や集客力が不足している場合、売却が進みにくくなります。売買経験が豊富な不動産会社を選ぶことが大切です。

2.囲い込みのリスクがある

囲い込みとは、他社から買主を紹介されても、自社で買主を見つけようとするあまり、紹介を断る行為です。囲い込みが行われると、売却の機会が減り、結果的に売主が損をすることがあります。

3.途中解約時に違約金が発生する場合がある

専任媒介契約は契約期間(通常3か月)内に途中解約をすると、違約金が発生する場合があります。契約内容は事前にしっかり確認しましょう。

専任媒介契約で注意すべき「囲い込み」とは?

例えば、A社が売主から専任媒介契約を取り付けたとします。その後、B社が買主候補を連れてきたとします。しかし、A社は「その物件は他のお客様が検討中です」などと言って、B社からの紹介を断ってしまうことがあります。

囲い込みは、売主にとって大きな不利益となります。売却の機会を逃してしまうだけでなく、売却価格が低くなる可能性もあります。

※イメージ図
出典:【専任媒介契約とは?】メリット・デメリットや一般媒介との違いを解説|すまいステップ

専任媒介契約はどんな物件に向いている?

このような物件は、多くの買主が興味を持つ反面、同時に競合する物件も多いため、不動産会社の宣伝力や販売戦略が重要です。

専属専任媒介のメリット・デメリット

専属専任媒介とは?

専属専任媒介契約とは、「1社の不動産仲介業者専用売却を依頼する契約」のことです。

この契約を結ぶと、売主は自分で直接購入主を見つけた場合でも、必ずその仲介業者の間で契約をしなければなりません。

専属専任媒介契約の主なメリットは以下の3点です。

1.積極的な営業活動が期待できる

専属専任媒介契約は、仲介業者にとって最も利益が見込める契約です。そのため、広告活動やのPRに力を入れてくれる性が高いです。例えば可能性としては、ポータルサイトへの掲載、SNS広告、オープンハウスの実施など、購入を見つけるための積極的な物件の行動が期待できます。

2.報告頻度が高く、販売戦略を立てやすい

専属専任媒介契約では、業者に対して「1週間に1回以上の販売活動報告」が義務付けられています。その
ため、販売主は「今どのような広告が出ているのか」「どれぐらい問い合わせが来ているのか」などの状況をタイムリーに把握でき、必要に応じて価格の見直しなどの対応がしやすくなります。

3.広告の優先度が高い(目立つ場所に掲載されやすい)

この契約は業者にとっても利益が大きいため、ポータルサイトやチラシなどで「より目立つ場所」に物件を掲載してもらえる可能性があります。 特に築年数の古い物件や売却が難しくても、積極的な販促が期待できます。

4.販売主に有利なルールがある(レインズ登録・報告義務)

専属専任媒介では、不動産流通機構「レインズ」への登録が契約締結から「5営業日以内」に義務付けられます。これにより、広く市場に情報が共有され、購入主が見つかる可能性が問題になります。また、定期的な活動報告も義務付けられており、業者がサボルリスクがなくなります。

一方で、専属専任媒介契約には以下のデメリットもあります。

1.自分で買主を見つけても仲介手数料が必要

専属専任媒介契約では、自分で直接主購入を見つけた場合でも、「必ず契約は仲介業者を通す」必要があります。

2.不動産会社の力で量に大きく左右される

契約を1社限定のため、その業者が販売力や広告力に乏しい場合、購入がなかなか実現できない可能性があります。業者選びを間違えると、売却のチャンスを逃してしまいます。

3.囲い込みのリスクがある

「囲い込み」とは、仲介業者が他社からの買主の問い合わせをわざとブロックし、「買主を意識して仲介(売主・買主両方から手数料を得る)」する行為です。これをされると、売却の機会が減り、結果として売却が遅れたり、価格が下がったりするリスクがあります。

4.契約期間中の解除には間違い金が発生する場合がある

専属専任媒介契約は「基本的に3ヶ月」が契約期間ですが、契約期間中に売主都合で契約解除する場合、違約金が請求される場合があります。

専属専任媒介契約で特に注意すべきこと

専属専任媒介契約で特に注意しなければならないのは、物件の囲い込みです。

仲介業者は、費用をかけて宣伝活動を行うため、どうしても自社で買主を見つけたいという気持ちが強くなります。そのため、他の業者からの紹介を断ったり、売主に不利な条件で契約を迫ったりすることがあります。

このような囲い込みを防ぐためには、他の業者からの紹介について詳しく報告を受けるようにしましょう。また、売却価格について定期的に相談し、市場価格とかけ離れた価格で売却しないように注意しましょう。

使われることは少ない契約方法

専属専任媒介はどうしても業者寄りの内容になっているので売主側から敬遠されやすく、媒介契約の中では利用されることが少ない契約の種類です。

ただし、本当に頼れる仲介会社に出会ったのであれば、その業者に決め打ちする形で専属専任媒介契約にするのも有りだと思います。

どんな物件を売るのに適しているのか?

専属専任媒介契約は、築40年を超えるような築古マンションや、物件が遠方にある場合に適しています。

築古マンションは、買い手がつきにくいため、仲介業者に積極的に販売活動を行ってもらう必要があります。専属専任媒介契約であれば、仲介業者は他の業者に顧客を取られる心配がないため、積極的に販売活動に取り組んでくれるでしょう。

また、遠方の物件の場合、密な連絡や相談をしながら販売戦略を立てる必要があります。報告義務が最も細かく設定されている専属専任媒介契約は、そのようなニーズに合った契約内容と言えます。

買主、借主から見た専任媒介物件の良し悪しは?

買主や借主が仲介業者と媒介契約を結ぶことはありませんが、媒介契約の仕組みを理解することで、よりお得に中古マンションや賃貸物件を選ぶことができます。

本記事では、専任媒介契約が買主や借主にとってどのような影響を与えるのかを、丁寧に解説していきます。

一般媒介と専任媒介の違い

一般媒介契約の場合:

  • 売主(貸主)は複数の仲介業者に同時に依頼することができます。
  • 例えば、A社、B社、C社に依頼している場合、あなたがA社経由で検討していても、B社やC社が先に契約を成立させてしまうことがあります。

専任媒介契約の場合:

  • 売主(貸主)は1社の仲介業者だけに依頼します。
  • 他社に先を越される心配が少なく、じっくりと検討する時間を持てます。

ポイント: 専任媒介物件は「自分が気に入った物件を他の人に先取りされにくい」点が大きなメリットです。

専任媒介は仲介手数料を値切れる可能性あり

  • 専任媒介契約の期間は最長3ヵ月です。
  • 3ヵ月後には契約を更新するか、別の業者に乗り換えることが一般的です。
  • 仲介業者は専任期間内に契約を成立させたいので、契約終了が近づくと「手数料を割引してでも契約をまとめたい」と思うことがあります。

交渉のコツ: もし業者から「契約期限が迫っている」という話が出た場合は、思い切って仲介手数料を半額程度まで交渉してみるのも一つの方法です。

物件の値引き交渉には不利かも

  • 一般媒介の場合: 複数の業者が競争するため、「他社よりも早く契約をまとめたい」と積極的に値引き交渉をしてくれます。
  • 専任媒介の場合: 1社独占なので「高く売れれば仲介手数料が増える」ため、値引き交渉は消極的になりがちです。

例: 売値が200万円下がるだけで、仲介業者の手数料は13万2000円も減るので、業者は売主に強い値引き交渉をしにくくなります。

よくある質問

ここでは、不動産売却の際によく寄せられる質問を、初心者でもわかりやすい言葉でまとめています。

一般媒介契約の期間と契約できる業者数は?

一般媒介契約では、同時に複数の不動産会社と契約が可能です。

3社でも5社でも問題はありませんが、あまり多く契約しすぎると情報の管理が大変になり、混乱することがあります。

例えば、「このお客様はどの業者から紹介された方だったかな?」といった混乱が起こりやすくなります。そこで、同時に依頼する業者は3社以内にするのがおすすめです。

その理由は次の2つです:

  1. 情報管理がしやすくなるため:業者が多いと、どこからの紹介か混乱しやすくなります。
  2. 業者のやる気を維持できるため:あまり多くの業者に依頼すると、「うちで契約を取れる確率が低い」と営業担当が感じ、積極的に動いてもらえないことがあります。

可能であれば、2社程度に絞ると、より丁寧な対応が期待できるでしょう。

一般媒介契約でもレインズに物件を載せてもらえる?

一般媒介契約では、不動産流通システム「レインズ」への登録義務はありません。登録するかどうかは業者の判断に任されています。

そのため、レインズへの登録をお願いすることは可能ですが、業者が必ず応じるわけではありません。一般的な業者は登録することが多いですが、一部の業者は自社だけで買い手を見つけようとして登録を控えることがあります。

専任媒介契約や専属専任媒介契約の読み方は?

  • 専任媒介契約:せんにんばいかい
  • 専属専任媒介契約:せんぞくせんにんばいかい

読み方が難しいですが、基本的な不動産用語なので覚えておきましょう。

専任媒介契約を一般媒介契約に途中で変更できる?

契約期間中に専任媒介契約を一般媒介契約へ変更することは基本的にできません。

変更する場合は以下の方法になります:

  • 契約期間が満了するのを待つ
  • 契約期間内に途中解約する(業者と合意する場合のみ)

途中解約をする場合は、業者によっては広告費などの実費を請求されることがあるため、事前に契約内容をしっかり確認しておきましょう。

専任媒介契約の途中で解約は可能?

専任媒介契約は、通常、契約期間の満了(最大3ヵ月以内)で自動的に終了しますが、次の方法で契約期間を短くすることも可能です。

  • 契約期間を1ヵ月または2ヵ月に設定する:初めから短期間の契約にしておくことで、様子を見ながら更新や契約先の変更ができます。
  • 途中解約をする:どうしても途中で解約したい場合は、業者に相談して合意を得る必要があります。ただし、広告費などの実費請求や違約金が発生する可能性があるため注意しましょう。

まとめ

不動産売却では、「一般媒介」か「専任媒介」を選ぶ方が多いですが、どちらがよいかは物件や状況によって異なります。

以下を参考に、慎重に選んでください。

  • 専任媒介契約は、業者がより積極的に売却活動を行うため、バランスが取れた選択肢です。
  • 一般媒介契約は、複数業者の競争により広い販路を期待できますが、管理が複雑になります。

また、媒介契約は原則3ヶ月間となります。売却活動がうまくいかない場合は契約を終了し、他の業者への依頼や契約内容の見直しを検討しましょう。

ポイント媒介契約を結ぶ前には、1社だけでなく最低でも3社程度に相談し、提案内容を比較してから依頼することをおすすめします。

不動産売却は仲介業者選びがとても重要です。信頼できるパートナーを見つけて、納得のいく売却を目指しましょう。

離婚したらマンションはどうする?財産分与やローン返済について解説

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最近では共働き家庭が増加していますが、この記事では、夫が働き、妻が家庭を支えるというモデルケースを前提にして、離婚時のマンション売却や財産分与など、不動産に関する問題について詳しく解説していきたいと思います。

すでに住宅ローンを完済している場合は大きな問題にはなりませんが、住宅ローンの支払いが続いている場合は、財産分与や養育費にも大きく影響を及ぼすことになります。

このため、しっかりとした理解が必要です。

マンションが財産分与の対象になるのは?

結婚前に購入したマンションや、結婚後に夫婦のどちらかが相続したマンションについて、離婚時の財産分与にどのように関わるのか、多くの方が気になっているのではないでしょうか。

ここでは、マンションが財産分与の対象となるかどうか、いくつかの想定パターンを紹介しながら解説していきます。

結婚前に支払いが終わっていた場合

まず、夫または妻のどちらかが結婚前にマンションを購入し、さらに結婚前にそのマンションの支払いを完了していた場合について考えてみましょう。

これはマンションなどの不動産に限らず、預貯金や株券などにも同様の考え方が適用されます。

結婚後もローンを支払っている場合

次に、夫または妻のどちらかが結婚前にマンションを購入し、その住宅ローンを結婚後も支払っていた場合について説明します。

この場合、離婚時の財産分与の対象となります。

例えば、夫が5,000万円のマンションを購入し、頭金として500万円を支払い、その後1,000万円を住宅ローンとして支払った後に結婚し、結婚後に残りの3,500万円を完済したとします。

この場合、頭金の500万円と支払い済みの1,000万円の合計1,500万円は夫の固有財産とみなされ、結婚後に支払った3,500万円のみが夫婦の共有財産として扱われます。

もしこのマンションが離婚時に4,000万円で売却された場合、購入価格よりも資産価値が20%減少しているため、夫の頭金と結婚前に支払った1,500万円は20%減の1,200万円となり、残りの2,800万円を夫婦で財産分与することになります。

婚姻中にマンションを相続した場合

出典:特有財産とは?【弁護士が解説】|弁護士法人デイライト法律事務所

結婚後に夫または妻のどちらかがマンションを相続した場合、このマンションは相続人固有の特有財産と見なされるため、財産分与の対象とはなりません。

この考え方は、マンションなどの不動産だけでなく、生命保険や預貯金で得た相続財産にも適用されるため、注意が必要です。

親が頭金を出してくれていた場合

婚姻中にマンションを購入する際に、親が頭金を出してくれた場合、財産分与はどのようになるのでしょうか。

例えば、妻側の親がマンション購入の頭金として500万円を援助したとします。

したがって、マンションの評価額が2,000万円だった場合、援助してもらった500万円を差し引いた1,500万円を夫婦の共有財産として計算するのは誤りです。

このマンションの当初の購入資金を2,500万円と仮定すると、援助してもらった500万円は全体の5分の1に相当し、売却時の評価額2,000万円の5分の1にあたる400万円が妻の特有財産として考えられます。

このように、離婚時のマンションや不動産に関する問題は、さまざまな要因によって異なりますので、事前にしっかりと理解しておくことが重要です。

離婚後もマンションに住む場合の注意点

離婚をしたからといって、必ずしもマンションを売却する必要はありません。

離婚後も夫婦のどちらかがマンションに住み続けることがあるため、その場合の財産分与について考える必要があります。

今回は、夫または妻がマンションに住み続ける場合について詳しく説明いたします。

夫(名義人)が住み続ける場合

まず、マンションの名義人である夫が離婚後もマンションに住み続けるケースについて考えてみましょう。この場合、主に二つのパターンが想定されます。

1. すでに住宅ローンを完済しているマンション

例えば、離婚時にそのマンションの売却査定額が3,600万円だったとします。

妻は当然、1,800万円を一括で支払うよう要求してくるでしょう。しかし、もし夫がどうしても一括での支払いが難しい場合は、妻の了承を得られれば分割での支払いも可能です。

分割に応じてもらえない場合には、マンションを抵当に入れて金融機関から融資を受ける必要があるかもしれません。

2. 離婚時に住宅ローンが残っているマンション

次に、婚姻中に5,000万円で購入したマンションがあり、まだ3,000万円の住宅ローンが残っている場合を考えます。

このマンションの離婚時の売却査定額が3,600万円だったとすると、売却価格3,600万円からローン残債の3,000万円を引くと、夫婦に600万円の負債があることになります。

ただし、もしマンション以外に現金で1,000万円の預貯金があれば、この1,000万円を夫800万円、妻200万円と分配することで、マンションの負債分300万円を相殺することも可能です。

妻子が住み続ける

次に、マンションの名義人が夫であるにもかかわらず、離婚後は妻がマンションに住み続けるケースについて考えます。この場合も、二つのパターンが考えられます。

1. すでに住宅ローンを完済しているマンション

住宅ローンが完済されている場合、特に難しい問題はありません。

もし財産分与を行う必要がある場合、売却査定額の半分を夫に渡すことになります。

他の財産分与で相殺できない場合は、妻の親に一時的に立て替えてもらったり、マンションを抵当に入れて金融機関から融資を受けることになるかもしれません。

ただし、未成年の子どもがいる場合は、養育費などと相殺する方法も考えられます。

2. 離婚時に住宅ローンが残っているマンション

最も面倒でトラブルになりやすいのは、住宅ローンの支払いが終わっていない場合です。

この場合、マンションの名義を妻に変更することはできません。

たとえ慰謝料や財産分与で妻がマンションを受け取ることができたとしても、ローンを完済するまで名義人は元夫のままです。

そのため、元夫の意志でマンションを売却することも可能ですし、ローンの支払いを滞納するリスクもあります。

万が一、ローンの支払いを滞納し続けると、マンションが差し押さえられるリスクが生じます。

以上のように、離婚後にマンションに住み続ける場合には、さまざまな注意点があります。事前にしっかりとした計画を立て、必要な手続きを行っておくことが重要です。

マンションを売却する時の注意点

離婚時にマンションを売却する際には、いくつかの重要な注意点があります。

特に、住宅ローンが完済されているのか、それともまだ支払い中なのかという点が大きな影響を及ぼします。

この違いによって、売却の難易度が大きく変わってくるため、しっかりと理解しておくことが重要です。

ローン残債より高く売れない場合は持ち出しになることも

住宅ローンが残っているマンションを売却する際の注意点として、まず考慮すべきなのは、融資をしている金融機関の同意が必要であるということです。

基本的に、ローンを完済できる目途がない場合、金融機関は売却に賛同しないことが多いです。

これは、たとえ自分たち名義のマンションであっても、売却が難しくなることを意味します。

ローンが残っているマンションを売却するためには、以下の二つの条件が考えられます。

  1. 残りのローンを預貯金で一括返済する。
  2. ローン債務以上の金額で売却する。

例えば、住宅ローンが2,000万円残っている場合、この金額を預貯金で一括返済するのは容易ではありません。そのため、多くの場合、売却して得た現金から一括で返済することになります。

しかし、もしそのマンションが1,500万円でしか売れない場合、どうなるのでしょうか。

このように売却額が債務を下回る場合、不足分の500万円については預貯金などから持ち出さなければなりません。この不足分を用意できない場合、金融機関は売却の許可を出してくれないのです。

任意売却を選択した場合

出典:任意売却とは?通常売却と比較しながらプロが徹底解説

もしマンションを売却してもローン債務の額に届かず、なお不足分を一括返済するほどの資産もない場合、任意売却という方法があります。

任意売却とは、これ以上ローンの支払いを続けることが困難なときに、債権者にお願いして抵当物件の売却を許可してもらう手続きです。

融資をしている金融機関も、自己破産されるよりは少しでも高値で売却できる任意売却を仕方なく認めるのが本音です。

ただし、任意売却を行ったからといって、不足している分の残債務がすべて免除されるわけではありません。売却後に不足している分は、分割で支払っていくことになります。

売却が完了するまでに長い時間が必要かも

ローンが残っている状態でマンションを売却する場合、ローン債務を完済したいため、市場の相場よりも高値での売却を希望することが多くなります。

相場よりも高値で売りに出すと、買い手が見つかるまでに時間がかかることが一般的です。

このように、マンションが売れるまで離婚が進まない場合、新しいスタートを切ることができないという問題が生じます。

マンション売却を得意とする不動産会社や仲介会社に依頼するのが最も効果的ですが、不動産知識がない素人には難しいこともあります。

そのため、なるべく多くの不動産会社で売却査定をお願いし、相談する機会を増やすことが求められます。このような準備を整えることで、スムーズな売却が実現できるでしょう。

賃貸物件として貸し出す場合

離婚時のマンション活用法として、多くの方が選ぶのが賃貸マンションとして人に貸すという選択肢です。

確かに、最近では養育費を支払わない元夫が増えており、その結果、妻側の生活が困窮していることが社会問題にもなっています。

将来的に養育費が不払いになるリスクを考慮すると、確実に手元に届く家賃収入を養育費として受け取ることが安心であるという考え方は理解できます。

ローン返済計画をしっかり立てないとハイリスク

もし毎月元夫から養育費を直接受け取っているのであれば、支払いが滞ったことにすぐ気づくことができるでしょう。

しかし、家賃として受け取っている場合、妻側は住宅ローンを滞納していることに気づかず、銀行から督促状が届いて初めて知るという事態も考えられます。

このように督促状が届いてからでは、対策を取ることが難しくなり、最終的には裁判所からの差し押さえを待つしかなくなってしまいます。

さらに、もう一つのリスクとして空室リスクがあります。入居者がいる間は家賃収入が得られますが、入居者が退去してしまうと、次の入居者が決まるまで家賃収入は途絶えてしまいます。

基本的には売却しておくのが無難

このように、マンションを賃貸として貸すことにはリスクがあることを認識しておくことは、離婚時の財産分与の話し合いにも役立つでしょう。

賃貸として貸すリスクを承知して行動するのは自由ですが、懸念される材料は少ないに越したことはありません。

可能であれば、売却という選択肢を選び、すっきりした気持ちで再スタートを切ることをおすすめします。

よくある質問

離婚時のマンション売却や財産分与について今回紹介しきれなかった部分や、ネットなどで良く質問されている内容などをまとめてみました。

マンションが売れない時はどうしたらいい?

自分たちが考えていたギリギリの金額まで売値を下げてもマンションが売れない場合があります。

このような場合は、一旦仲介での売却を諦め、買取業者に相談することをおすすめします。

近隣の不動産会社や仲介会社でもマンションの買取をしてくれるところがありますが、買取専門の業者の方が買取をしてくれる可能性が高く、買取金額も交渉次第で高くなることが期待できます。

売却理由「離婚」は正直に伝えるべき?

これは売主さんからよく尋ねられる項目ですが、管理人はいつもこう答えています。

購入希望者に対してこちらからわざわざ離婚が売却の理由であると伝える必要はありませんが、聞かれたときには「家庭の事情です」と伝える程度で問題ないと思います。

財産分与は離婚成立後でも請求できる?

出典:離婚後でも財産分与の請求はできますか?|弁護士法人デイライト法律事務所

離婚が成立した後でも、財産分与を請求することは可能です。

また、離婚から2年以内に調停や審判を申し立てると、調停や審判が行われている間に2年が経過しても財産分与の請求権は消滅しません。

まとめ

離婚時の不動産の扱いは、金額が大きいだけにトラブルに発展しやすいです。

離婚後にマンションを売却するのか、それともどちらかが住み続けるのかは状況によりますが、住み続ける場合はトラブルが起きやすいことを理解しておくことが大切です。

基本的には売却しておく方が無難であると考えられますので、もし住み続けるかどうかで迷った場合は、一度売却査定額を確認し、その金額で双方が納得できるかを確認することが良いのではないかと思います。

家やマンションの相続税はいくら?兄姉で意見が合わない時の対処法

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親や兄弟から不動産を相続した際、どれくらいの費用や税金がかかるか気になる方は多いでしょう。

今回は、家やマンションを相続した際の費用や税金、トラブルの対処法について詳しく解説します。

不動産を相続したときの費用と税金

まず、家やマンションを相続する際にかかる費用や税金について説明します。

これらの費用を事前に把握しておいて、相続手続きがスムーズに進められます。

マンションを相続するときにかかる費用

マンションなどの不動産を相続する場合の費用としては、以下のようなものがあります。

戸籍謄本や住民票などの取得費用3,000~5,000円※相続人の数による
相続人全員の印鑑証明の取得費用1,000~2,000円※相続人の数による
不動産の名義を変更するための手数料30,000~70,000円

一番高額になるのが、不動産の名義を変更してもらうため司法書士に支払う手数料です。

この手数料は司法書士ごとに異なるため、費用を抑えたい場合は、複数の司法書士事務所に見積りを依頼すればよいでしょう。

マンションを相続したときにかかる税金

マンションなどの不動産を相続した場合の税金としては、以下があります。

登録免許税固定資産評価額の0.4%
相続税相続財産3,600万円以下は免除

登録免許税とは?

登録免許税は、不動産の名義変更(相続登記)を行う際に必要となる税金です。
例えば、固定資産評価額が1,000万円のマンションを相続した場合、0.4%の軽減が適用されるため、登録税免許は40,000円となります。

相続税の基礎控除とは?

相続税は、遺産の総額が基礎控除額を超えた場合にのみ発生します。
基礎控除の計算式は以下のとおりです。

📌基礎相続額 = 3,000万円+600万円 × 法定相続人の人数

例、相続人が3人(配偶者+子ども2人)の場合、基礎控除額は4,800万円となります。
そのため、遺産総額が4,800万円以下であれば、相続税の支払いは不要です。

相続したマンションを売却するときにかかる税金

相続したマンションを売却する場合、「譲渡所得税」などの税金が発生する可能性があります。

主な税金の種類は以下のとおりです。

印紙税5,000~30,000円
登録免許税固定資産評価額の0.4%
譲渡所得税と住民税譲渡益の20%~39%

印紙税は売買契約書に添付する印紙代のことで、売買価格によって印紙の金額が異なります。

売買価格印紙代
500万円以上 1,000万円以下5,000円
1,000万円以上 5,000万円以下10,000円
5,000万円以上 1億円以下30,000円

譲渡所得税と住民税に関しては、すべての売買物件に該当するわけではなく、売却することで利益が発生した場合のみ、税金で納めることになります。

例えば両親が3,000万円で購入したマンションを相続し、その後2,000万円で売却したとします。

これだと1,000万円の赤字となるので利益は出ておらず、譲渡所得税の対象とはなりません。

その逆のパターンとして、2,000万円で購入したマンションを相続後に3,000万円で売却した場合、1,000万円の譲渡益が発生しているので、この1,000万円に対して譲渡所得税と住民税が課せられることになります。

譲渡所得税と住民税は、該当不動産の所有期間によって税率が異なります。(※保有期間は相続してからではなく、被相続人が不動産を取得してからの年数で計算します。)

保有期間所得税住民税
短期譲渡所得※5年以下30%9%
長期譲渡所得※5年以上15%5%

その他、仲介業者に支払う仲介手数料も発生するので注意しましょう。

相続でよくある失敗例とその対策

相続した不動産を巡って、相続人同士の意見が合わないケースや、手続きを誤ることでトラブルが発生することがあります。

ここでは、特に多い失敗例とその対処法について解説します。

不動産名義人の問題

出典:数次相続の仕組みと法定相続分|相続弁護士カフェ.com
※三次相続の例

共有名義での相続はむしろのが理想です。

✔ 共有名義の不動産は、将来的に売却が困難になる
✔ 相続人の一人が他界した場合、その相続人の子ども(孫世代)も権利を持つため、手続きが複雑化

📌対策:相続時に単独名義にするか、早期に共有者間で売却計画を立てる

相続した不動産の登記漏れ、接道がない

出典:接道義務を満たさないと再建築不可能物件になる!|イエコン

せっかく相続した不動産ですが、よく調べてみると不動産登記に問題があるケースも多いです。

✔ 増築やリフォーム部分が登記されていないと、売却時に問題が発生
✔ 「接道義務」を満たしていなければ、新築の建設ができるず、売却が正当になる

📌対策:相続後に不動産登記を専門家に確認してもらい、必要なら登記を修正する

親が購入した不動産の購入価格が不明

出典:売却価格の5%で諦めてはいけない!|土地資産家のための税務講座

この場合、物件の売却価格の5%を購入費として計算するのですが、2,000万円で売れと仮定しても購入費は5%なので100万円でしかありません。

こうなると1,900万円が譲渡益となり、支払う税金の負担が大きくなります。

✔ 購入価格が不明である、売却時に不利な税計算となる(取得費が不明な場合、売却価格の5%で計算される)
✔ 結果として、税負担が増えてしまう

📌対策:事前に親が購入した際の資料を整理し、購入価格を明確にしておく

相続した家やマンションの売却

ここでは相続した家やマンションを売却するポイントについて解説していきたいと思います。

相続した不動産の売却における基本的な考え方

相続した家やマンションを売却する際は、資産価値や市場動向を総合的に判断する必要があります。

特にマンションの場合は、都心部を中心に中古物件の価格が上昇する傾向も見られますが、その動向は限られた条件の物件に集中しています。

以下に、売却を成功させるための重要なポイントを詳しく解説します。

早期売却の重要性

戸建てでもマンションでも、相続した不動産を売却する意思がある場合は、できるだけ早期に売り出すことが推奨されます。理由は以下の通りです。

  • 築年数による資産価値の下落: 不動産は築年数が経過するほど価値が下がり、特にマンションは築年数が30年を超えると買い手の対象から外れることが増えます。
  • 市場動向の不確実性: 都心部の中古マンション価格が上昇している場合でも、それは築浅かつ駅近など条件が非常に良い物件に限られます。築28年のマンションが2年後に築30年になるだけで、購入希望者の選択肢から外れてしまうリスクがあります。

相続人全員の売却意思の確認

売却を進めるためには、相続人全員の合意が必要です。

  • 合意がない場合のリスク: 相続人のうち1人でも反対すれば売却は難航し、最悪の場合は売却自体が不可能になります。
  • 事前の話し合いが重要: 名義人が存命中から相続後の不動産について話し合うことを推奨します。もし反対者がいる場合は、名義人から直接説得してもらうことでトラブルを防げます。

リフォームして売却するか、そのまま売却するか

築年数が経過した物件の場合、「リフォームしてから売却した方が良いか?」という相談が多くあります。それぞれの選択肢のメリットとデメリットを整理します。

【そのまま売却する場合】

  • メリット: リフォーム費用がかからず、すぐに売却活動を開始できる。
  • デメリット: 築年数が古い場合は内見時にマイナス印象を与える可能性がある。

【リフォームして売却する場合】

  • メリット: 購入検討者に良い印象を与え、売却までの期間が短縮されやすい。
  • デメリット: リフォーム費用を売却価格に反映させにくく、結果的に損失が出る場合がある。

リフォーム費用と売却価格の関係性

一般的に、リフォーム費用を売却価格に完全に上乗せするのは難しいと言えます。

500万円のリフォーム費用に対して上乗せできるのは200万円から300万円程度が一般的です。

そのため、まずはリフォームしない状態で売りに出してみて、反応を見ながらリフォームを検討するのが現実的な選択肢となります。

マンションの主なリフォーム費用を掲載しておきますので参考にしてください。

リフォーム箇所費用
システムキッチン(新品に交換)70~150万円
ユニットバス(新品に交換)100~200万円
トイレ(最新型に交換)25~35万円
壁紙50~70万円
フローリング張替え50~80万円
間取りの一部変更100~300万円

土地の相続「調整区域」や「農地」

土地の相続は、戸建てやマンションと同様に発生するケースが多く、特に更地や農地を相続する場合には注意が必要です。

ここでは、市街化区域、調整区域、農地を相続した場合のポイントや、売却および活用方法について詳しく解説します。

1. 市街化区域の土地

  • 特徴: 住宅地としての需要が高く、流動性も高いため売却しやすいです。
  • 対応: 相続後は不動産会社に相談すればスムーズに売却手続きが進められます。
  • 価格: 市街化区域は立地が良いため、資産価値も高く安定しています。

2. 市街化調整区域の土地

  • 課題:
    • 建物の建設が制限され、買主が見つかりにくい。
    • 市街化区域に比べて、資産価値が10分の1以下になることもあります。
  • 対応:
    • 相続した土地が市街化区域か調整区域かを調査します。
    • 調査方法は、最寄りの役所や不動産会社で確認できます。
    • 市街化調整区域マップはインターネットでも閲覧可能です。
  • 活用法:
    • 資材置き場: 広い敷地が求められ、初期投資も少なく済みます。
    • レンタルボックス: 初期投資は必要ですが、安定した収益が見込めます。

市街化調整区域マップ

3. 農地を相続した場合

出典:QRコード(二次元バーコード)付き書面申請の開始と登記事項証明書(不動産登記)の様式変更について|法務省

農地は、売却や転用の際に特別な手続きが必要となります。

  • 農地転用の必要性: 登記上「畑」または「田」とされている場合、実際に耕作していなくても農地転用許可が必要です。
  • 転用申請: 農地転用許可は所轄の農業委員会に申請します。
    • 期間: 許可取得まで約2か月が目安です。
    • 申請書類: 転用理由、土地利用計画書、登記事項証明書などが必要です。

4. 相続した土地の売却方法

土地売却には大きく分けて「仲介売却」と「不動産会社買取」の2つの方法があります。

  • 仲介売却:
    • メリット: 市場価格で売却が期待できる。
    • デメリット: 売却完了まで半年から1年以上かかる場合があります。
  • 不動産会社買取:
    • メリット: 早急な現金化が可能。
    • デメリット: 市場価格よりも2〜3割程度安くなる傾向があります。
  • おすすめ: 仲介と買取を同時に依頼し、条件が良い方を選ぶのが効果的です。

5. 相続した土地の活用方法

相続した土地は売却だけでなく、収益物件として活用する選択肢もあります。

  • 低コストでの活用:
    • 資材置き場: 初期投資が少なく、調整区域でも実現可能。
    • 駐車場: 市街地に近ければ安定収益が見込めます。
  • 中〜高コストでの活用:
    • レンタルボックス事業: 初期投資はかかるものの、近年人気の高い事業形態です。
    • 賃貸アパート建設: 立地次第で安定した収益が見込めますが、5,000万円以上の初期費用を想定する必要があります。
  • おすすめの活用:
    • コンビニ建て貸し事業:
      • 自社建設型: 高い賃料収入が期待できますが、初期投資は大きくなります。
      • 土地貸し型: コンビニ側が建物を建設するため、初期費用は不要ですが、賃料は低めになります。

いらない不動産を相続してしまったらどうする

相続した家やマンション、土地を売却しようとしても、半年経っても一年経っても買い手がつかないというケースは少なくありません。

ここでは、売りたくても売れない不動産をどのように処分するか、その方法について解説します。

不動産を寄付したい場合の現実

インターネットなどで「不要な不動産を自治体に寄付できる」といった情報を目にすることがありますが、実情としては多くの自治体が寄付を受け付けていません。理由は以下の通りです。

  • 固定資産税などの維持費が発生するため: 自治体は不動産を所有することで維持費や税金を負担しなければならず、その費用は市民の税金で賄われることになります。
  • 立地条件が重要: 公園や公共施設に転用できる立地であれば例外的に受け入れる場合もありますが、売れない土地は多くの場合、利活用が難しいため断られます。

このように、不動産を自治体に寄付するのは現実的な解決策ではありません。

2. 相続放棄という選択肢

不要な不動産は、相続放棄することで引き継がずに済ませることが可能です。ただし、以下の点に注意が必要です。

  • 他の相続人に権利が移る: 自分が相続放棄をしても、他の家族や兄弟が相続人となり、同じ問題を抱えることになります。
  • 相続財産全てを放棄することになる: 相続放棄は不動産だけでなく、預貯金や株式など他の資産もすべて放棄することを意味します。
  • 家庭裁判所への申立が必要: 相続放棄は、被相続人が死亡したことを知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てを行う必要があります。

「生前贈与」と「死後相続」節税効果が高いのはどっち?

財産を承継する方法には「生前贈与」と「死後相続(遺産相続)」がありますが、税負担の観点でどちらが有利かを比較してみます。

死去した後に被相続人の遺産を分配するのが死後相続ですが、それと比較検討されるのが被相続人が存命のうちに財産を分配する生前贈与です。

生前贈与って得なの?

生前贈与とは将来相続するであろう財産を被相続人が存命中に分配する方法です。

この場合だと相続ではなく贈与になるため、贈与税が発生します。

生前贈与では以下のような税金がかかります。

  • 贈与税=年間110万円までは非課税
  • 登録免許税=評価額×2%
  • 不動産取得税=評価額×3%

贈与税は年間基礎控除の110万円を超えると、金額に応じて税率が変わります。

200万円以下10%
300万円以下15%
400万円以下20%
600万円以下30%
1000万円以下40%
1500万円以下45%
3000万円以下50%
3000万円以上55%

このように生前贈与にはかなり高い税金が課せられることがわかります。

では死後相続と比較した場合、どれくらい納税額に違いがあるのか比較してみたいと思います。

死後相続と生前贈与を比較

  • 相続税の基礎控除が大きい: 最低でも3600万円(3000万円 + 法定相続人1人あたり600万円)が基礎控除となり、多くの場合、相続税は生前贈与に比べて軽減されます。
  • 登録免許税:0.4%と生前贈与よりも優遇されます。
  • 不動産取得税:課税されません。
比較項目生前贈与死後相続
贈与税・相続税 110万円/1人まで非課税最低3600万円まで非課税
登録免許税 2%0.4%
不動産取得税 3%なし

なぜ生前贈与をするのか?

税負担は死後相続が有利ですが、生前贈与にも以下のようなメリットがあります。

  • 財産分配を自分の意思で決められる: 争族(相続トラブル)を未然に防ぐことができます。
  • 贈与時点の評価額で計算される: 将来的な資産価値の上昇リスクを回避できます。
  • 一定の節税効果がある: 年間110万円の非課税枠を活用すれば、長期的な贈与で節税効果が期待できます。

状況に応じて、税理士や不動産の専門家に相談することをお勧めします。

よくある質問

家やマンションの相続に関して、今回紹介しきれなかった部分や、ネットなどで良く質問されている内容などをまとめてみました。

相続マンションの評価額を調べるには?

出典:固定資産税評価額とは?知っておきたい計算方法や調べ方|SUUMO
※実際に送られてくる課税明細書の一例(マンションの場合)。自治体によって様式が違う(SUUMO編集部にて作成)

相続したマンションの資産価値を知るためには、不動産評価額を確認することが重要です。

不動産の資産価値には主に以下の2種類があります。

  1. 売却する場合の資産価値: 将来的な財産分与の基準となるため、相続不動産が市場でどれくらいの価格で売却できるかを把握しておく必要があります。不動産会社に売却査定を依頼することで、現時点の市場価値を把握できます。
  2. 不動産の評価額(固定資産税評価額など): 固定資産税評価額は、固定資産税などを算出する際に用いられ、売却価格よりも一般的に低く設定されています。評価額は、毎年送付される固定資産税納付書に記載されていますので、土地と建物の評価額を必ず確認しましょう。

不動産相続のポイントを簡潔に教えてください

相続トラブルを防ぐためには、事前準備が大切です。特に以下の点を家族でしっかり話し合っておきましょう。

  • 相続財産の把握不動産を含む資産価値を事前に査定しておくことで、財産分与や相続税のシミュレーションが可能です。
  • 相続人の確認と話し合い: 相続人全員で遺産分割について事前に意見を擦り合わせておきましょう。
  • 遺言書の作成相続トラブルを防ぐ最善策は、被相続人が存命中に遺言書を作成しておくことです。
  • 相続税対策の検討: 相続税が発生するかどうかを確認し、必要に応じて税理士に相談しましょう。

遠方にあるマンションを相続したとき、誰に相談すればいいの?

遠方の不動産を相続した場合は、どの不動産会社に相談すべきか迷うことがあります。

以下を参考にしてください。

  • 物件がある地域の不動産会社に相談するのがベスト地元の不動産会社は地域の市場動向に詳しく、適正価格での売却を進めやすいです。
  • 全国展開している大手不動産会社を検討: 直接相談したい場合は、全国に支店を持つ大手不動産会社も選択肢となります。ただし、フランチャイズ形態(例:エイブルやアパマン)の場合は実質的に地元の個人店であることも多いため、サービス内容を確認しましょう。

自分の持ち分だけ売却できますか?

兄弟姉妹など複数名で共有している相続不動産について、自分の持ち分だけ売却できるかは以下の通りです。

  • 法律上は可能: 共有名義の不動産であれば、持ち分だけを売却することは法律上問題ありません。
  • 現実的な問題点: 持ち分だけを購入する買主は少なく、一般の不動産会社では取り扱いが難しいことが多いです。
  • 解決方法共有名義不動産を専門とする買取業者に相談すると、持ち分売却の選択肢が広がります。

まとめ

家やマンションの相続はトラブルが発生しやすいため、事前の準備が重要です。

  • 家族間で相続財産・相続人・相続税について十分な話し合いをしておくこと。
  • 不動産の資産価値は売却査定と固定資産税評価額の両方を確認すること。
  • 遺言書を作成しておくことで、相続トラブルを防げます。
  • 遠方の物件は地元の不動産会社や大手不動産会社への相談が有効です。
  • 共有名義不動産は、専門業者への相談が解決の糸口となります。

また、不要な不動産は相続放棄が可能ですが、相続確定前にしか行えないため注意が必要です。

相続後のトラブルを未然に防ぐためにも、早めの準備と専門家への相談を心がけましょう。

マンションの買い替えで失敗しないために!売却のタイミングや住宅ローンのポイントを解説

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「家族が増えた」「職場が変わった」「親の介護が必要になった」など、ライフスタイルの変化に伴い、現在の住まいを見直し、マンションの買い替えや住み替えを検討する方はほとんどありません。

さらに、住宅ローンが残っている場合、その精算方法についても検討中が必要です。

そこで、この記事ではマンションの買い替えや住み替えを成功させるためのコツについて詳しく解説していきます。

マンションの買い替え・住み替えのタイミングはいつがベスト?

マンションの買い替えや住み替えを検討する際、最も重要なポイントの一つが「タイミング」です。

売却や購入のベストな時期について深く考えすぎて、なかなか決断できないという方も多いですが、実際に住み替えを検討するする人が多いタイミングには、一定の傾向があります。

特に、次のようなライフイベントがきっかけで買い替えを考えるケースが多く見られます。

  1. 出来事が生まれた、または子どもが増えた
     家族が増えることで現在の住まいが手狭に感じられ、新しい住居への引っ越しを検討する方が多いでしょう。 特に、子どもが成長する過程、より広い間取りや子育て環境の整ったエリアへの移住を考えるケースが増えます。
  2. 進歩が成長し、自分の部屋を望むようになった
     子どもが小さいうちは問題なかったもの、成長する過程で個室の必要性が出てくるため、間取りの広いマンションや戸建てへの買い替えを考える家庭が多いです。
  3. 両親の介護が必要になった
     高齢者の両親と同居するために、より広い家やバリアフリー設備の整った住居へ引っ越すケースもあります。人も少なくありません。
  4. 独立し、夫婦の生活になった
     子どもが巣立った後、夫婦二人だけで暮らすには現在の住まいが広すぎる、または管理が大変になるから、コンパクトなマンションや公平性の高いエリアへの住み替えを考える方も多くなります。

出典:マンション買い替えのタイミングはいつがベスト?

このようなタイミングでマンションの買い替えや住み替えを決断する人が多く、特に40代の方が最も多く買い替えを行っているというデータもあります。

「購入」と「売却」どっちが先?

マンションの買い替えを検討する際、多くの人が悩むのが「新居の購入」と「現在の住宅の売却」のどちらを優先すべきかという点です。

「先に購入すべき」という意見もあれば、「売却を優先すべき」という意見もあり、どちらが正しいか分からない方も多いでしょう。

出典:【ホームズ】初めての住み替え「売る」と「買う」はどっちが先?

実際のところ、「購入」と「売却」のどちらを先に進むのが正しいかというような答えはありません。

これは、買い替えを検討する理由や現在の住宅ローンの状況、経済的な余裕などによって違うからです。

そこで、本記事では「買い先行」と「売り先行」のそれぞれのメリット・対策について詳しく解説していきます。

ご自身の状況に合った方法を選ぶための参考にしてください。

買い先行(新居の購入を優先する場合)のポイントと注意点

まず、新居の購入を先に進める「買い先行」のケースについて、メリットや注意点を見ていきましょう。

買い先行のメリット

①じっくりと新居探しができる
「買い先行」の最大のメリットは、時間をかけて希望条件に合った物件をじっくり検討する
点です。

②仮住まいが不要
「売り先行」の場合、一時的に賃貸などの仮住まいを確保する必要がありますが、「買い先行」であればその必要があります。家賃や引っ越し費用を節約できます。

③買い替え特約が使える
「買い替え特約」とは、現在の住居を期限内に売却できなかった場合、新居の購入契約を違約金なしで解除できる特約です。
この特約を利用することで、新居購入のリスクを軽減できます。

④ マンションが空き家になり、売却しやすくなる
新居へ引っ越した後に現在のマンションを売却するため、内覧時に家具がない状態で見せられるというメリットがあります。何もない状態なため、売れやすくなる可能性が高くなります。

買い先行のデメリット

①一時的に二重ローン(ダブルローン)になる
現在の住宅ローンが残った状態で新居を購入すると、二重でローンを払う期間が発生します。
家計への負担が大きいため、慎重に資金計画を立てる必要があります。

出典:住宅ローンでダブルローンを利用する際に知っておくこと

②買い替え特約などの期限に追われ、安くて売却してしまう可能性がある
ダブルローンの負担を早く解消するために、本来の売却価格よりも安く売られてしまうケースもありません。
特約を利用している場合、期間内に売却できなければ新居の契約が解除されてしまうため、焦って売却を進めなければならないこともあります。

買い先行に向いている人

  • 新居へのこだわりが強い人(時間をかけて理想の住まいを探したい)
  • 現在の住宅ローンを完済している人(ダブルローンのリスクなし)
  • 所有しているマンションが好条件である人(早く売れる話がある)

「とにかく納得のいく新居を探したい!」という方には、買い先行が向いていると言えます。

先行販売(最新住宅の売却を優先する場合)のポイントと注意点

次に、現在の住宅を売却してから新居を探す「売り先行」のケースについて解説します。

売り先行のメリット

①売り急ぐ必要がなく、じっくり売却活動ができる
「先行」の最大のメリットは、売却価格を焦らずじっくり設定できることです。
「買い先行」の場合、ダブルローンの負担や期限のプレッシャーから値段で売却してしまう場合がありますが、「売り先行」なら時間をかけて納得のいく価格で売却できます。

②売却代金で住宅
ローンを完済できる 現在の住宅を売却したお金で住宅ローンを完済できるため、新居購入時に資金計画を立てやすくなるという特典があります。

③資金計画が組みやすい早期
売却が完了しているため、新規購入時にどれくらいの予算を確保できるかが明確になる点も大きな余裕です。

売り先行のデメリット

①仮住まいが必要になる
新居が見つかるまでの間、一時的に賃貸物件などに住まなくてもよいため、引っ越し費用や家賃の負担が大きくなることになります。

② 内覧のたびに家の掃除が必要
最新住宅に住みながら売却活動を行うため、内覧のたびに掃除や片付けをしなくても、負担が大きくなることがあります。

③居住中だと少し売れづらい
家具や生活感のある状態での内覧になるため、買い手にとっての部屋のイメージが湧きづらく、売れにくい可能性があります。

売り先行に向いている人

  • 住宅ローンの残債務がある人(売却代金で完済できる)
  • 今家を少しでも高く売りたい人(時間をかけて価格交渉が可能)

特に「現在の住宅ローンが残っており、少しでも高い値で売りたい」という方には、先行売りが適しています。

どうしても希望の時期までに売れなかった場合は?

どうしてもご希望のタイミングまでに売却が進まない場合は、「業者買取」という方法があります。

業者買取とは、不動産会社や買取業者に直接物件を買い取ってもらうことをいいます。

出典:「買取」と「仲介」どっちがお得?下関不動産情報

業者買取のメリット

  • すぐに現金化できる(最短5営業日ほどで売却可能)
  • 契約不適合責任(旧瑕疵権利責任)が負担される
  • 仲介手数料が不要

業者買取だと最短5営業日ほどで現金化することができます。

また、売却後の契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)も免除される点も売主にとっては大きなメリットだと言えます。

業者買取のデメリット

  • 市場相場より3割ほど安くなる

業者買取の唯一のデメリットと言えるのが、市場の相場よりも買取価格が安くなってしまう点です。

買取業者との交渉次第ですが、一般的には市場相場より3割ほど低い価格での買取となります。

※マンションの買取に関しては「マンション買取業者の選び方は?」の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。

買い替え、住み替え時の住宅ローン

現在のお住まいのマンションの住宅ローンをすでに完了している場合は、特に問題はありませ
ん。

住宅ローンが残った状態で買い替えを行う場合、どのような準備が必要なのか、詳しく解説していきます。

住宅ローンが残っている場合の買い替え

出典:住み替えローンなら売却も購入もスムーズ?

住宅ローンが残っている状態で買い替えを進める場合、まず「現在のローン残高がいくら残っているのか?」を確認することが重要です。

売却代金がローン残債に満たない場合

当面、売却した金額がローンの残債に満たない場合、不足分を自己資金で補う必要があります。

これが明確にならなければ、買い替え計画も、新居の購入も進むことができません。

不足分を現金で補えない場合

どうしても自己資金で不足分を補うことが難しい場合は、「住み替えローン」の活用を検討することもできます。

住み替えローンの特徴について詳しく解説します。

住み替えローンの特徴

出典:住み替えローンなら売却も購入もスムーズ?

このローンを利用することで、売却代金だけでは住宅ローンを完済できない場合でも、新居の購入を進むことが可能となります。

住み替えローンの注意点

  • すべての金融機関が扱っているわけではない
     住み替えローンは、どの銀行でも利用できるわけではありません。そのため、利用を検討する際は、事前に取り扱いのある金融機関を確認しておくことが重要です。
  • 売却と購入を同時に行うことが原則
     住み替えローンを利用する場合、基本的に「現在の住宅の売却」と「新居の購入」を同時に進める必要があるという点に注意が必要です。
  • 借入額が増えるため、返済負担が大きくなる
     住宅ローンの借入額が増えることで、 月々の返済額も増加し、家計の負担が大きくなる可能性があります。審査に通る基準を満たしていることも必要となります。

住み替えローンを利用する際は、メリットと治療をよく考え、無理のない返済計画を立てることが大切です。

買い替え、住み替え時の主な費用

住み替えや買い替えを行う際には、物件の「売却時」と「購入時」のそれぞれで様々な費用が発生します。
ここでは、売却・購入どちらも3,000万円の物件を前提とした場合の適切な費用を紹介します。

購入時の諸費用

仲介手数料105万6千円
印紙代10,000円
登記費用※登録免許税 50万~60万円
※抵当権設定登記10万~20万円
住宅ローン諸費用50,000~100,000円
火災保険料30万~40万円
雑費※固定資産税やマンション管理費 日割り計算になります
不動産取得税※2~3か月後 60万~70万円

売却時の諸費用

仲介手数料105万6千円
印紙代10,000円
抵当権抹消15,000~25,000円
住宅ローン繰上げ返済手数料0円~30,000円

仮住まいが必要になれば、これとは別に賃貸物件の初期費用や引っ越し費用などで100万円ほどの出費も考えておく必要があります。

買い替え、住み替えで失敗しないポイント

買い替えや住み替えは、人生で何度も経験するものではありません。
一度マイホームを購入した経験があっても、買い替えや住み替えとなると手順や進め方が異なるため、戸惑うことも多いでしょう。

スムーズに進むためには、事前に必要な知識を身に付け、慎重に計画を立てることが大切です。

ここでは、買い替え・住み替えで失敗しないためのポイントについて詳しく解説していきます。

買い替え特約を活用する

買い替えや住み替えで「購入をどんどん進める場合」は、「買い替え特約」を活用することを強くおすすめします。

「売却が予定通りに進まなかった場合のリスクを軽減できる」ため、買い替え時に安心して取引を進めることができます。

また、これと同じような制度として「住宅ローン特約」もあります。
こちらは、住宅ローンの審査に通らなかった場合に、違約金なしで契約を解除できるという特約です。

全体の特色も、買い替え・住み替えのリスクを考慮した重要な制度ですので、購入の際には必ず活用を検討しましょう。

購入と売却は同じ仲介会社が良いの?

買い替え・住み替えの際は、購入と売却を同じ仲介会社に依頼するのが理想的です。

メリットとして、

  • 購入と売却のスケジュール調整をスムーズに進めてくれる
  • こちらの状況をよく理解した上で、最適な提案をしてくれる

また、購入したい物件を持っている不動産会社が別の場合でも、仲介業者同士で連携して調整を行ってくれるので問題はありません。

転居先は「間取り」ではなく「広さ」で選ぶ

新居を選ぶ際、現在の住まいと「同じ間だから問題ない」と考えてしまうのは危険です。

今の住まいが3LDKだから、新居も3LDKを選べば問題ないと思っても、3LDK(80㎡)→3LDK(60㎡)のように、全体的に面積が大きく異なる場合があります。

60㎡台のLDK
出典:マンションデータPlus

80㎡台のLDK
出典:マンションデータPlus

実際に、

  • 60㎡のLDKは約12.1帖
  • 80㎡のLDKは約17.4帖
    といった違いがあります。

また、モデルルームの家具の配置などを参考にしつつ、実際の生活動線をイメージして選んでください

よくある質問

買い替えや住み替えに関して、今回紹介しきれなかった部分や、ネットなどで良く質問されている内容などをまとめてみました。

媒介契約はどれを選ぶべきですか?

現在の住まいを売却する際には、不動産会社と「媒介契約」を締結しなければなりません。

媒介契約には大きく分けて「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類があります。

媒介契約の内容については、別記事の不動産の売却時、一般媒介と専任媒介ならどちらが有利?で詳しく解説していますので、そちらも参照頂ければと思います。

購入と売却同時進行で、先に売却がきまったらどうなるの?

買い替えや住み替えでは、「売却」と「購入」が同時進行で進行ケースが一般的ですが、どうやら同じタイミングで決まるわけではありません。

そのため、どちらが先に決まるかによって対応が変わってきます。

購入が先に決まった場合

売却が先に決まった場合

売却が先に決まった場合は、以下の2つの選択肢があります。

  1. 購入希望者と交渉し、引き渡し期時期を待ってもらう
  2. 一時的に賃貸などの仮住まいを利用する
     

交渉が難しい場合は、賃貸物件を借りて仮住まいをする必要があります。

なお、仮住まいには敷金・礼金・引っ越し費用など約100万円程度の出費がかかることもありますので、事前に準備をしておきましょう。

空き家の方が早く売れますか?

売却の際は、とりあえず新居へ引っ越して、空き家の状態にしておくのが理想です。

理由としては、
家具などないほうが、部屋を広く見せられる
購入希望者が内見するときに、自分の家具や生活をイメージしやすくなる
内覧のたびに片付ける手間が不要になる

といったメリットがあるためです。

実際に、家具が残ったままの状態よりも、空き家の方が売れやすい傾向にあります。
できれば先に新居を購入し、その後に売却活動を進めるのが理想的です。

売却したお金を購入資金に使えますか?

現在の住居を売却し、その代金を新居の購入費用に充てたいと考える方も多いと思います。

この場合、現在の住宅ローンの残債があるかどうかが重要なポイントとなります。

住宅ローンを完了している場合

住宅ローンを完済している場合は、売却代金を自由に使うことができます。
新居の購入費やリフォーム費など、自分の好きな用途に充てることが可能です。

住宅ローンが残っている場合

現在の住宅ローンが残っている場合、売却代金でローンの残債を一括返済することが必須条件となります。
そのため、売却額がローン残債に満たない場合は、不足分を自己資金で補うか、住み替えローンを活用する必要があります。

まとめ

今回は、マイホームの買い替え・住み替えについて詳しく解説しました。

買い替え・住み替えのタイミングや、「買い先行」か「売り先行」かの選択は、個々の状況によって異なります。

また、中古マンションを購入する場合、希望に合う物件がタイミングよく出てくるかどうかは運の要素もありますが、売却の査定はいつでも可能ですので、早めに行うことをおすすめします。

住んでる住宅の評価額を認識しないと、資金計画を正しく立てることができないからです。

買い替え・住み替えは、思った以上に時間がかかるものです。
計画的に進むためにも、家族としっかりしながら協力して取り組むことが大切です。

進んでもスムーズに進められるよう、この記事の内容を参考にしていただければ幸いです。

家の解体費用は?更地に戻す方法を解説

カテゴリー

不要になった家を解体して更地に戻すためには、どれくらいの費用がかかるのでしょうか?

これを聞くと、予想以上に高いと感じる人も多いでしょう。

このページでは、以下のポイントについて詳しく説明します。

  • 家を解体するための費用相場
  • 解体までの流れや必要な期間
  • 安く更地にするためのコツ
  • 土地を売却のために解体することのメリットとデメリット

家を解体して更地にするのに必要な費用相場

まず、家を解体するための費用がどのくらいかかるのか見てみましょう。

木造住宅の解体費用は、最近数年で高騰しています。

多くの人が「100万円くらい」と考えているかもしれませんが、実際にはこの金額では足りないことが増えています。特に、過去5年と比べると、解体費用が1.5倍に上昇している地域もあります。

高騰の理由

  • 廃棄物処分費用の上昇
  • 国外への廃棄物輸出の制限
  • 解体工事を行う職人の人手不足

解体費用は建物の素材で異なる

では具体的にどれくらいの解体費用がかかるを説明していきます。

解体費用は、家の素材によって変わります。一般的な素材には、木造、鉄骨、RC(鉄筋コンクリート)などがあります。

それぞれの素材別に、解体費用の目安となる「1坪あたりの単価」を紹介します。

家の種類1坪当たりの費用
木造住宅25,000円~38,000円/坪
プレハブ住宅20,000円~34,000円/坪
鉄骨住宅25,000円~40,000円/坪
鉄筋コンクリート(RC住宅)38,000円~50,000円/坪
※2022年1月時点

上記は2022年時点の目安相場ですが、編集部が数年前に調べた時は以下のような坪単価でした。

ここ数年でどれだけ解体費が高騰しているわかると思います。

家の種類1坪当たりの費用
木造住宅18,000円~30,000円/坪
プレハブ住宅12,000円~20,000円/坪
鉄骨住宅12,000円~28,000円/坪
鉄筋コンクリート(RC住宅)25,000円~38,000円/坪
※2016年時点

数年前には、これらの費用はもっと低かったため、解体費用がどれほど高騰しているかが分かります。

また、解体費用は都道府県によって異なり、築年数や周囲の道路状況によっても変わります。正確な金額を知りたい場合は、見積もりを取ることが重要です。

もちろん依頼する業者によっても大きく変わるので、見積もりを取る際は必ず複数の業者で相見積もりをしましょう。

1社だけの見積りでは、その金額が高いのか安いのか判断がつかないからです。

相見積もりが初めてという人は、社団法人「あんしん解体業者認定協会」が運営している「解体無料見積ガイド」というホームページがあるので、そこを利用して比較すれば安心だと思います。

坪数ごとの解体費用相場

ここでは、30坪から50坪の家についての解体費用の相場をまとめます。

以下の費用は建物の解体費用のみで、付帯工事や諸経費は別途必要です。

ちなみに同じ30坪の平屋と2階建てでは、2階建て住宅の方が解体費が高くなりそうと思われがちですが、実際は屋根や基礎部分が多い平屋の方が高額になります。

木造住宅

家の大きさ坪単価解体費用の目安
30坪35,000円1,050,000円
40坪32,000円1,280,000円
50坪28,000円1,400,000円
30坪平屋38,000円1,140,000円

日本国内の戸建て住宅は、約6割が木造で建てられています。

鉄骨やコンクリートに比べて較的簡単に解体できるので、他の構造よりも解体費は安いです。

プレハブ住宅

家の大きさ坪単価解体費用の目安
30坪32,000円960,000円
40坪28,000円1,120,000円
50坪24,000円1,200,000円
30坪平屋34,000円1,020,000円

大手住宅メーカーが多く採用している構造がプレハブ住宅です。

工場で生産されたユニットを組み立ててつくる住宅なので、解体にそこまで手間がかかりません。

そのため解体費も比較的安価に設定されています。

鉄骨住宅

家の大きさ坪単価解体費用の目安
30坪37,000円1,170,000円
40坪33,000円1,320,000円
50坪30,000円1,500,000円
30坪平屋40,000円1,200,000円

軽量鉄骨や重量鉄骨などの種類がありますが、上記の目安は戸建てで使われることが多い鋼の厚さ6mm未満の軽量鉄骨住宅です。

重量鉄骨の住宅は3階建てに多く、解体費用としては軽量鉄骨よりも2割~3割ほど割高になると考えてください。

鉄筋コンクリート(RC住宅)

家の大きさ坪単価解体費用の目安
30坪45,000円1,350,000円
40坪43,000円1,720,000円
50坪40,000円2,000,000円
30坪平屋50,000円1,500,000円

マンションの構造などにも用いられている鉄筋コンクリートですが、戸建て住宅の場合はRC造と呼ばれることが多いです。

RC住宅はコンクリートが主体なので、解体作業も手間がかかるため高額になりがちです。

解体費用が高くなってしまうケース

アド・ホック・デザイン「福島市で2階から解体工事が進んで、手作業で解体しています」より引用

解体費用が高くなる理由はいくつかあります。以下にその要因を詳しく説明します。

1. 重機を使用できるかどうか

重機を運ぶための道が確保できれば、費用を抑えることが可能です。

しかし、重機が入らない土地にある建物の場合、すべてを手作業で解体しなければならず、その分費用が高くなります。

道幅の重要性

道が狭いと、大きなトラックが入ることができず、瓦礫の運搬にも影響が出ます。

例えば、大きなトラックであれば3回の運搬で済むものが、小さなトラックだと5回や6回の運搬が必要になることがあります。このように、道幅は解体費用に大きな影響を与える要因の一つです。

2. 付帯工事が多い

海東建設株式会社「ちょっとした小さな解体・撤去」より引用

解体工事には、建物そのもの以外にもさまざまな工事が含まれることがあります。

たとえば、駐車スペースやブロック塀の解体がそれにあたります。

これらの工事は、建物の解体費用とは別途で必要になるため、見積もりを依頼する際には、これらの付帯工事についても詳細に打ち合わせをすることが重要です。

その他にも、庭木の伐採や門扉の解体などが考えられます。

3. 建物内に残置物が多い

解体する建物内に家具や家電製品が残っている場合、これらの処分費が別途かかることがあります。

たとえば、木製のタンスやダイニングテーブルは一緒に壊して処分できますが、家電製品やソファーなどは処分費がかかります。

事前に自分で処理しておくことで、費用を大幅に抑えることができるでしょう。

4. アスベストの使用

解体見積もり広場「アスベスト解体工事とは何か?」より引用

古い建物には、アスベストという有害な材料が使われていることがあります。

アスベストが含まれている場合、専門的な技術や設備が必要となるため、解体費用が高くなります。

アスベストを含む住宅の場合、坪あたり3~5万円程度の費用がかかることが一般的です。

5. 交通量や人通りの多い場所

解体工事を行う場所の交通量や人通りが多い場合、安全確保のためにガードマンを配置する必要があります。

特に交通量が多いエリアでは、2名のガードマンが必要になることがあり、その分費用がかさみます。

ガードマンの1日当たりの費用を15,000円と仮定すると、1週間の工事で約20万円の追加費用が発生する可能性があります。

6. 住宅会社や不動産会社からの業者紹介

住宅会社や不動産会社から解体業者を紹介されることもありますが、多くの場合、これらの業者は中間マージンを取るため、割高になってしまいます。

自分で直接業者を探すことをおすすめします。業者のあてがない場合は、「解体無料見積ガイド」などのサービスを利用して、複数の会社を比較するのが良い方法です。

これらの要因を理解し、事前に対策を講じることで、解体費用を抑えることができます。

家を解体するまでの流れ

ここでは、家を解体するための手続きや工事の流れ、所要日数について詳しく説明します。

解体に着手するまでに必要な手続き

家を解体する前には、いくつかの届出書を提出して許可を得る必要があります。

通常、解体業者が代理で申請を行ってくれますが、届け出は施主本人が行うことになっています。

そのため、代理申請をお願いする場合は、委任状が必要です。

必要な手続き項目

  • 解体工事の届出書(建設リサイクル法に基づく)
  • 道路使用許可申請(必要な場合)
  • 電気、水道、ガスなどのライフラインの停止手続き
  • 解体後の登記手続き(建物滅失登記)

解体工事の流れと日数

T.O.S「解体工事の流れ」より引用

一般的に、建物の解体作業だけであれば約1週間で完了します。

しかし、庭木の伐採や駐車スペースの解体など、付帯工事が必要な場合は、2週間から3週間ほどかかることがあります。

解体工事の流れ

最近では、解体後の廃棄物処理に関するルールが厳しくなっているため、一気に取り壊すのではなく、部分的に少しずつ解体していくのが一般的です。

以下のステップで工事が進みます。

  1. 足場を組み、建物周りを養生シートで囲う
    • これにより、周囲への影響を最小限に抑えます。
  2. 屋根の撤去と家屋内の不用品の撤去
    • 屋根を取り外し、内部にある不要な物を片付けます。
  3. 建物本体の解体
    • 建物の主要部分を解体します。
  4. 廃棄物の運搬・処分
    • 解体した材料や廃棄物を適切に処理します。
  5. 地中残留物の確認と敷地の整地
    • 地面に残っているものがないか確認し、敷地を整えます。

上記の流れで工事は進行します。

作業はすべて解体業者に任せられますので、施主本人が特別に行うことはありません。

ただし、工事の流れについて疑問がある場合は、事前に解体業者に確認しておくと安心です。

安く更地にするためのコツ

ここでは、解体費用をできるだけ安く抑えるためのポイントを詳しく紹介します。

補助金や助成金が使えないか調べる

家を解体する際、地域によっては自治体から補助金や助成金がもらえることがあります。

これは、古くなった家屋の解体を促進するための支援制度です。ただし、すべての自治体で実施されているわけではありません。

以下は、いくつかの自治体での補助金制度の例です。

自治体名内容
東京都江東区老朽建築物の除却助成。上限50万円で解体費の2分の1を補助
埼玉県さいたま市建替え工事助成制度。S56.5.31以前に着工したものを新たに建替える場合。上限60万円
神奈川県横浜市建築物不燃化推進事業補助。昭和56年5月31日以前の建築物又は耐用年数を経過した建築物。上限150万円で解体費の2/3
愛知県名古屋市老朽木造住宅除却助成。上限40万円で解体費の3分の1を補助
大阪府大阪市大阪市防災空地活用型除却費補助制度。上限100万円で解体費の3分の2を補助
福岡県大牟田市老朽危険家屋等除却促進事業。上限45万円で解体費の2分の1を補助
※上記は執筆時の情報です。詳しくは各自治体に確認して下さい。

これらの補助金は、国の政策ではなく、主に自治体が独自に実施しているものです。

インターネットで調べる際は、「自治体名 + 家解体 + 助成金」というキーワードで検索すると、効率よく情報を見つけることができます。

複数の業者で相見積もりをとる

解体工事を依頼する際は、必ず複数の業者から見積もりを取りましょう。これにより、費用を安く抑えることができます。

解体工事は普段あまり行わない作業なので、相場が分からない人が多いです。

1社だけで見積もりを取ると、その金額が高いのか安いのか判断できません。複数の業者から見積もりを取り、適正な金額を確認することが重要です。

相見積もりを簡単に行うためには、「解体無料見積ガイド」を利用すると良いでしょう。これを使えば、誰でも簡単に相場を確認し、契約する前にしっかりと比較できます。

閑散期(5~6月、9~11月)に工事をする

解体業者には繁忙期と閑散期があります。

閑散期に工事を行うことで、値引き交渉が成功しやすくなります。

一般的に、閑散期は以下のように言われています。

  • 閑散期: 5月~6月、9月~11月
  • 繁忙期: 3月~4月、8月、12月

特に、5月~6月は梅雨前で工事がスムーズに進むため、値引き交渉がしやすい時期です。

一方で、9月~11月は台風シーズンで工事が長引く可能性があるため、注意が必要です。できるだけ早めに工事を計画し、閑散期を狙うと良いでしょう。

土地を売却するために解体するのはNG

家を解体したいと思っている方の中には、「土地を売却するために解体を考えている」という方もいるでしょう。

確かに、古い建物の場合、更地にして売却した方が買い手が見つかりやすいこともあります。

しかし、ここで注意が必要です。更地にするということは、解体にかかる費用を売主が負担することになります。これは明らかに「損」です。

なぜなら、売却後に買主が解体を行った場合、その解体費用は買主の負担になるからです。

仲介業者が解体をすすめる理由には、早く売れるという点の他に、解体業者を紹介して仲介手数料を得る狙いもあるため、注意が必要です。

更地にしてしまうと税金が増える可能性あり

ウェルスハック「更地の固定資産税はなぜ高いのか?」より引用

建物が残っている状態では、たとえ誰も住んでいなくても固定資産税が軽減されています。

しかし、建物を解体してしまうとその軽減措置が受けられなくなり、固定資産税が増加します。

たとえば、これまで年間5万円だった固定資産税が、建物を解体すると毎年30万円に増えてしまうこともあるので、注意が必要です。

前述のように、家を解体せずにそのままの状態で売却を検討する方が無難です。

再建築不可の土地は要注意

株式会社マーキュリー「再建築不可・接道の悩み」より引用

古い住宅が現行の建築基準法が施行される前に建てられている場合、今の法律では家を建てることができない土地である可能性があります。

たとえば、「接道」という道路との接続に関する問題があります。

現在の法律では、4メートル幅の道路に土地が2メートル以上接道していなければ、家を建てる許可が下りません。このような土地は「再建築不可の土地」と呼ばれます。

このような土地の場合、建物が残っている状態では新築はできなくても大規模リフォームが可能なので、買い手を見つけやすいです。

このことを知らずに解体してしまうと、大きな損失を被る可能性があるため、十分に注意しましょう。

そのまま売却した方が金銭面でもお得に

ここまで説明したように、「土地を売るために家を解体する」という判断は、かえって損につながる可能性が高いです。

確かに更地にすれば早く売れるかもしれませんが、金銭的に大きな損失を被るリスクがあるなら、家を壊さずにそのまま売却した方がメリットが大きいでしょう。

そのままの状態で売却できれば、解体費用がかからず、余計な手間もかかりません。

このような理由から、売却を考える際には「まずは家を残したままの状態で」という方法をおすすめします。

実際に売れるかどうかは試してみなければわかりませんが、大手ポータルサイトの「SUUMO」や「HOME4U」、不動産大手6社が運営する「すまいvalue」などを利用して全国の業者に査定依頼を出してみれば、何らかの反響があると思います。

最近では、古い家でも全面リノベーションをして自分好みにするニーズが高まっているため、売れる可能性は十分にあります。売却査定は無料で行えるので、最初から諦めずに一度試してみてください。

よくある質問

住宅の解体や土地の更地化に関して、よく寄せられる質問をまとめました。以下の情報を参考にしてください。

更地の定義は?どこまでやればいいの?

NEEDS+「更地とは」より引用

「更地」と「整地」という言葉を混同している人が多いですが、実はこれらは異なる意味を持っています。

  • 更地: 土地に建物や建築物が全くない状態のことを指します。つまり、何も残っていないまっさらな土地です。
  • 整地: 建物がなく、さらに転圧作業を行って平らに整えられた土地を指します。

解体業者によっては、この違いを説明しないこともありますので、見積もりを取る際には「更地にするのか、それとも整地にしてもらえるのか」を必ず確認しましょう。

特に、解体後に土地を売却する予定がある場合、整地された状態の方が売却査定が高くなることが多く、購入希望者への印象も良くなります。

家を解体する際に不要な家具や家電はそのままでも平気?

解体業者によっては、木製のタンスやベッドフレームなどはそのまま残しておいても問題ない場合が多いです。しかし、テレビや洗濯機などの家電製品は、自分で処分しておいた方が費用を抑えられることが一般的です。

エアコンについても同様で、基本的には自分たちで業者に依頼して、解体工事の前に取り外しておくことをおすすめします。

平屋と二階建てで解体費用に差は出る?

解体費用は、一般的に二階建て住宅よりも平屋住宅の方が高くなることが多いです。

これは、同じ面積(たとえば30坪)の家を考えた場合、平屋は屋根や基礎の面積が大きく、その分処分するための費用がかかるからです。

参考例)

  • 30坪の2階建て(1階15坪、2階15坪) …解体坪単価 35,000円
  • 30坪の平屋住宅 …解体坪単価 42,000円

地域や業者によって差はありますが、平屋は二階建て住宅と比べて1割から2割ほど高くなることが一般的です。

まとめ

今回の解説から分かるように、建物の解体工事費用は以前に比べてかなり高くなっています。

少しでも安く解体を行いたい場合は、事前に複数の業者から見積もりを取って、安く解体してくれる業者を探すことが重要です。

早めに見積もりを取って、スケジュールに余裕を持たせることで、業者側も喜ぶでしょう。解体することが決まったら、すぐに見積もりを取ることをおすすめします。

また、土地の売却が目的であれば、一旦は家を解体せず、そのままの状態で売れるかどうかを確認してみるのも良いでしょう。

最近では、古民家を全面リノベーションしたいというニーズも多いため、そのままで売れる可能性も十分にあります。

レインズに登録しない不動産業者は悪質か?売買時の活用方法と確認手順

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不動産の売却を検討し始めると、「レインズ(REINS)」という言葉を耳にする機会が増えます。

しかし、レインズとは具体的にどのようなシステムなのか、また不動産業者が登録しない場合に問題があるのかについて詳しく理解している人は少ないかもしれません。

レインズとは、不動産の情報交換ができるシステムのこと。

売却したい物件がレインズへ登録されると、すぐに全国の不動産業者へ情報が共有されます。

本記事では、レインズの仕組みやその役割、売却時の活用方法について詳しく解説します。

また、不動産業者がレインズに登録しないケースのリスクや対処法についても触れますので、不動産売却を検討している方はぜひ参考にしてください。

レインズとは?どんなシステムなの?

レインズ(REINS: Real Estate Information Network System)は、不動産情報を全国の不動産業者間で共有するためのデータベースです。

レインズには全国の不動産情報が一元化されており、これに登録することで広範囲にわたる購入希望者への情報提供が可能になります。

特に、不動産売却をスムーズに進めるために重要なツールの一つと言えるでしょう。

登録から売却までの流れ

不動産の売却において、レインズはどのように活用されるのでしょうか?基本的な流れを以下に示します。

  1. 売主が不動産業者と媒介契約を締結
    • 不動産業者と媒介契約を結ぶことで、売却活動が本格的に開始されます。
  2. 不動産業者がレインズへ物件情報を登録
    • 媒介契約の種類に応じて、物件情報がレインズに登録されます(詳細は後述)。
  3. 全国の不動産業者へ情報が共有される
    • レインズに登録された物件情報は、加盟している不動産業者に広く共有されます。
  4. 買主側の業者が問い合わせ・内覧を手配
    • 物件情報を見た他の不動産業者が、自社の顧客へ紹介し、購入希望者が現れます。
  5. 内覧を経て売買契約を締結
    • 買主が見つかれば、内覧や価格交渉を経て、売買契約を結びます。

このように、レインズを活用することで、物件情報が全国の不動産業者に共有され、売却活動が効率的に進められるのです。

誰でも閲覧できるの?

レインズは基本的に不動産業者専用のシステムであり、一般の方が自由に閲覧することはできません。しかし、売主は自身の物件に限り、以下の情報を閲覧することが可能です。

  • 登録された物件情報(価格、間取り、所在地など)
  • 取引の進捗状況
  • 問い合わせ履歴

これにより、売却活動の透明性を確保し、売主自身が進捗を把握できるようになっています。

東日本、中部、近畿、西日本の4つある

レインズは、以下の4つの地域ごとの不動産流通機構によって運営されています。

  • 東日本レインズ(北海道・東北・関東・甲信越)
  • 中部レインズ(東海・北陸)
  • 近畿レインズ(近畿地方)
  • 西日本レインズ(中国・四国・九州・沖縄)

これらの機関は同じシステムを利用しており、全国の不動産情報が統一的に管理されています。

媒介契約を結んでもレインズに登録されないことも

前途で「媒介契約を結んでいる業者がレインズに登録する」と説明しましたが、媒介契約の種類によっては登録されない場合があります。

契約の種類登録義務の有無登録期限
一般媒介なし
専任媒介必須7日以内
専属専任媒介必須5日以内

「専任媒介契約」または「専属専任媒介契約」を締結した場合、不動産業者は一定の期限内にレインズへ登録する義務があります。一方、「一般媒介契約」では登録が任意となるため、登録されないケースもあります。

また、不動産業者が「両手仲介」を行うために「囲い込み」をした場合、専属専任媒介と専任媒介でもレインズに登録されないケースもあります。

両手仲介や囲い込みは、業者の利益を追求するためだけに行われるもので、売主にとってはデメリットしかありません。

なお、レインズに登録しない業者への対処法についても後述していますので、ぜひチェックしてみて下さい。

レインズは個人でも利用できるのか?

レインズ(REINS)は、原則として不動産業者のみが閲覧できるシステムですが、売主に限り、自身の物件情報や取引の進捗状況を確認することが可能です。

これにより、売却プロセスの透明性を確保し、不動産業者の対応を適切にチェックすることができます。

登録証明書を取得し、掲載情報を確認する

媒介契約を締結後、レインズへの登録が義務付けられている契約形態(専任媒介・専属専任媒介)の場合は、登録期限が経過した後に「登録証明書」を発行してもらいましょう。

登録証明書には、以下の情報が記載されています。

  • 確認用ID
  • パスワード

これらを使用することで、売主は自身の物件情報が適切に登録されているかを確認できます。

囲い込みとは、業者が他の不動産業者に情報を提供せず、意図的に売主の物件情報を隠す行為で、結果的に売却期間の長期化や売却価格の低下につながる可能性があります。

媒介契約を結んで1週間程度経過したら、必ずレインズへの登録状況を確認することをおすすめします。

一般媒介契約の場合は契約変更を検討する

現在の媒介契約が「一般媒介」の場合、レインズへの登録義務はありません。つまり、業者の判断によって登録されない可能性があります。

一般媒介契約のもとでも、売主が依頼すればレインズに登録してもらえるケースもありますが、確実に登録してもらうためには「専任媒介」または「専属専任媒介」へ契約変更を検討するのがよいでしょう。

誰でも利用できる「レインズマーケットインフォメーション」

レインズは不動産業者と売主しか利用できませんが、一般の個人でも活用できるサービスとして「レインズマーケットインフォメーション」があります。

レインズマーケットインフォメーションとは?

このサービスでは、直近1年間の不動産成約データを閲覧でき、地域の相場や市場動向を確認することが可能です。売却を検討している物件の価格を決定する際の参考になります。

閲覧できる情報の例

  • 成約時期:過去1年間の売買履歴
  • 成約価格:市場価格の推移を把握
  • 築年数:築浅・築古の影響を確認
  • 間取り・平米数:同条件の物件と比較
  • 沿線・最寄駅:エリアごとの価格差を分析

個人情報保護のための制限

レインズマーケットインフォメーションは便利なツールですが、情報にはいくつかの制限があります。

  • 物件の詳細住所やマンション名は非公開
  • 現在進行形でレインズに登録されている物件情報は掲載されていない

つまり、このデータはあくまで過去の成約実績に基づくものです。したがって、今売却しようとしている物件の価格を決める際の「目安」として活用するのがよいでしょう。

レインズに登録しない業者への対処法は?

これは売主にとって大きなリスクとなる可能性があるため、対処方法を理解し、適切に対応することが重要です。

そもそも両手仲介・囲い込みとは?

両手仲介とは?

両手仲介とは、不動産業者が売主と買主の双方から仲介手数料を受け取ることを指します。これは業者にとって大きな利益をもたらしますが、売主にとっては不利益を被ることがあるため注意が必要です。

囲い込みとは?

囲い込みとは、業者が両手仲介を狙うために物件情報を外部に公開せず、自社で買主を見つけるように仕向ける行為です。具体的には、以下のような手法が取られます。

  • レインズに登録しない:他の業者に情報を見られないようにする。
  • 問い合わせを拒否する:他社からの問い合わせを意図的に断る。
  • 形だけ登録する:売主に見せるために一度登録し、すぐに取り下げる。

囲い込みが行われると、売却の機会を逃し、結果的に価格の低下や売却期間の長期化につながる可能性があります。

すぐに業者を変更する

レインズへの登録証明書の発行をしぶったり、何らかの理由をつけて登録していなかったりする業者は、囲い込みを行っている可能性があります。

業者を変更すべきタイミング

  • レインズへの登録を催促しても対応が遅い。
  • 登録証明書の発行を拒否する。
  • 他社の買主候補を紹介しようとしない。

変更手順

専任媒介や専属専任媒介の場合、複数の業者に同時に売却を依頼することができないため、契約を解除して新しい業者を選ぶ必要があります。

  1. 契約期間を確認する
    • 媒介契約の期間は通常3ヶ月。
    • 契約期間満了時には自動更新されないため、新しい業者と契約可能。
  2. 新しい業者を探す
    • 「すまいvalue」や「SUUMO」などの一括査定サイトを活用。
    • 信頼できる業者を複数比較する。
  3. 新しい業者と契約する
    • 透明性があり、囲い込みをしない業者を選ぶ。

囲い込みを防ぐために売主ができること

確認ポイント

登録証明書を確認する

  • レインズへの登録が完了したら、「登録証明書」を業者に発行してもらう。
  • 物件情報が適切に掲載されているかチェックする。

他の業者から問い合わせてもらう

  • 友人や知人に他の不動産業者へ問い合わせてもらい、紹介がスムーズに進むか確認する。
  • 問い合わせを拒否された場合、囲い込みの可能性あり。

定期的にレインズをチェックする

  • 一度登録されたのちに、業者が勝手に削除していないか確認する。

※両手仲介や囲い込みに関しては「売主を不利にする「囲い込み」とは?不動産会社の両手仲介対策について」で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください。

レインズに関するよくある質問

レインズに関するよくある質問をまとめましたので、参考にしてみてください。

レインズのログイン方法は?

自身の物件情報を確認する手順は、以下の通りです。

  1. 媒介契約を結んだ業者からレインズへの「登録証明書」をもらう
  2. レインズ(http://www.reins.or.jp)にアクセス
  3. 「売却依頼主向けログイン」をクリック
  4. 登録証明書の「確認用ID」と「パスワード」を入力
  5. 売却物件情報を確認

レインズの閲覧料金はいくら?

レインズの閲覧には、料金はかかりません。

ちなみに、過去の成約データが検索できる「レインズマーケットインフォメーション」も無料で利用可能です。

レインズに登録するデメリットは?

レインズに物件情報を登録すると、全国の不動産業者に情報が流れるため、売却情報の拡散が懸念される場合があります。

一般の人は直接閲覧できなくても、業者を経由すれば、誰もが情報を知り得る状況になるのです。

複雑な事情があって物件を売却する人の中には、周りに知られたくないと考える人もいるでしょう。このようなケースでは、レインズへの登録がデメリットになり得ます。

レインズは賃貸でも活用できるの?

レインズは、賃貸物件でも活用できます。

貸主(大家・管理会社)が不動産業者を通じて登録し、入居希望者とマッチングできます。

まとめ

レインズは不動産売却をスムーズに進めるための重要なシステムですが、一部の業者が囲い込みを目的として登録しないケースがあります。

その際は「近くの業者」や「知人の紹介」などで選ぶのではなく、多少面倒に感じても「すまいvalue」や「SUUMO」などのポータルサイト経由で探すのがおすすめです。

ちなみに、業者がおかしい動きをしていると感じた場合は、ポータルサイト側へ相談することもできます。

不動産の売却では多額のお金が動くので、悪質な業者に捕まらないようにしっかりと自己防衛していきましょう。

※その他の売却のコツは「マンション売却で高く売るためのポイントと仲介業者の選び方」の記事でまとめているので参考にしてください。

売主を不利にする「囲い込み」とは?不動産会社の両手仲介対策について

カテゴリー

不動産売買の現場では、売主の利益を損なう「囲い込み」と呼ばれる行為が頻繁に行われています。

この行為は、仲介業者が自らの利益を最大化するために行われるものであり、売主にとっては何の利益もありません。

しかしながら、日本では現在この囲い込みを取り締まる法律が存在しないため、悪質な行為であるにも関わらず、日常的に行われているのが実情です。

本記事では、こうした「囲い込み」や「両手仲介」の実態について詳しく解説するとともに、売主が損をしないための対策についてもご紹介いたします。

不動産を売るときの「囲い込み」とは

不動産を売却する際に、仲介業者が意図的に物件情報を隠したり、積極的に宣伝を行わなかったりするケースが見られます。

これは他の不動産業者に取り扱わせないようにする行為で、「囲い込み」と呼ばれています。

仲介手数料を二重取りする「両手仲介」が原因

SER不動産より画像引用

例えば、売主が依頼した不動産会社が、他の業者からの問い合わせに対して「すでに買い手が見つかった」などと虚偽の情報を伝えることがあります。

これは、他の業者が物件を紹介できないようにすることで、売主と買主の両方から仲介手数料を得る「両手仲介」を狙うためです。

  • 片手仲介:売主または買主のどちらか一方からのみ仲介手数料を受け取る。
  • 両手仲介:売主と買主の両方から仲介手数料を受け取る。

仲介手数料は宅地建物取引業法に基づいて、物件成約価格が400万円を超える場合は、「物件成約価格の3%+6万円」が上限と定められています。

3,000万円の物件を売買したケースを例に、片手仲介と両手仲介について考えてみましょう。

片手仲介の場合

売主が所有する3,000万円の物件をA不動産に仲介依頼したとします。すると、B不動産が買主を見つけ、売買契約が成立しました。

この場合、A不動産は売主から「3,000万円×3%+6万円=96万円」の仲介手数料を受け取り、B不動産は買主から96万円を受け取ります。

両手仲介の場合

同じく売主がA不動産に仲介を依頼し、A不動産が自社の顧客である買主を見つけた場合、売主と買主の両方から「3,000万円×3%+6万円=96万円」ずつ、合計192万円の仲介手数料を得ることができます。

囲い込みの問題点

売主にとってのデメリット

  1. 買主が見つかるまでの時間が長くなる:他の業者に情報を公開しないことで、買主が見つかる機会が減少し、売却までの時間が長くなります。
  2. 売却価格が下がる可能性がある:適正な市場価格で売却するためには、多くの買主候補からの競争が必要です。しかし、囲い込みが行われると、競争が起きにくくなり、相場よりも低い価格で売らざるを得なくなる可能性があります。
  3. 不透明な取引になる:他の業者の介入がないため、適正な価格での取引が行われているのかどうかの確認が難しくなります。

海外では禁止されていることも

アメリカやシンガポールなどの国では、両手仲介が法律で禁止されています。

なぜなら、売主と買主の利益は相反する関係にあるため、一つの仲介業者が両方の立場を同時に守ることは難しいと考えられているからです。

例えば、売主はできるだけ高く売りたいと考え、買主はできるだけ安く買いたいと考えます。このため、一つの仲介業者が双方の利益を同時に守ることは利益相反となり、適正な取引が行われなくなる可能性があります。

もし首都圏や大都市に住んでいる場合なら、業界で唯一「SRE不動産」は、会社方針として「両手仲介を行わない」と明言しているので、相談してみるのもいいと思います。

(※ただしサービス対象地域が首都圏や大都市のみとなっています)

SRE不動産の公式サイトはこちら

囲い込みされている可能性があるかをチェック

不動産売買において、売主にとって不利な「囲い込み」が行われているかどうかを確認するためのチェックポイントを解説します。

1. 相場価格で売り出しているのに問い合わせがこない

相場価格で売り出しているにも関わらず、問い合わせが全く来ない場合、囲い込みの可能性が高いと考えられます。

例えば、売主が依頼したA不動産が囲い込みをしているとします。

A不動産は物件情報を他の不動産業者に流さず、自社だけで買主を探そうとします。

このように、相場価格で売り出しているのに問い合わせが全く来ないのは不自然です。

仲介業者に進捗状況の報告を求め、探りを入れてみましょう。

2. 仲介業者と契約した直後に「安値」での買い付けが入った

仲介業者と契約した直後に買い付けが入った場合、その買主は業者が元々抱えていた顧客リストの中にいた人物である可能性が高いです。特に、安値を提示してきた場合は注意が必要です。

良心的な不動産業者であれば、売主のために他の買主を探すはずです。

例えば、3,500万円で売却希望の売主に対し、自社顧客の買主が3,000万円までしか予算がないとします。

この場合、囲い込みをする業者は「3,000万円ですぐにでも購入したいというお客様がいます。このお客様を逃すと、次の購入希望者はなかなか現れないかもしれません。すぐに売却する方が売主様にとってもメリットですよ!」などと言って、売主を焦らせたり急かしたりすることがあります。

確かに、早く売却できることは売主にとってメリットですが、希望価格よりも安値での買い付けは大きなデメリットです。囲い込みの可能性も考慮し、慎重に判断しましょう。

3. 売り出してからしばらく経つのにレインズに掲載されない

物件を売り出してからしばらく経つのにレインズに掲載されない場合、囲い込みを疑うべきです。

レインズとは、不動産物件情報を交換するためのネットワークシステムで、媒介契約の種類によって掲載義務が異なります。

  • 一般媒介: 掲載義務なし
  • 専任媒介: 7日以内に掲載義務あり
  • 専属専任媒介: 5日以内に掲載義務あり

レインズは基本的に不動産業者しかアクセスできませんが、売主は自身の物件に限り閲覧できます。

売り出してから1週間程度経ったら確認し、もし掲載されていない場合には、仲介業者に状況を詳しく聞いてみましょう。

4. レインズの規制

レインズに掲載せず、自社の顧客に個別に紹介したり、自社のホームページだけに掲載したりする囲い込みは、大手不動産業者でも日常的に行われています。

しかし、専任媒介の場合、レインズへの掲載は義務付けられているため、掲載を怠ると宅建業法違反にあたる可能性があります。

レインズ側も公正な不動産流通を目指して運用規定を改正しており、2013年10月には「正当な事由のない紹介拒否行為の禁止」が定められました。

2016年1月には取引状況の記載が義務付けられ、「公開中」「書面による購入申込あり」「売主都合で一次紹介停止中」の3種類で物件の状況がわかるようになっています。

レインズについては、「レインズに登録しない不動産業者は悪質か?売買時の使い方と確認方法」の記事で詳しく解説されているため、興味がある方はそちらをご確認ください。

悪質な囲い込みと法的責任

不動産売買における悪質な囲い込みの実例と、法的責任について解説します。

悪徳不動産業者の囲い込み実例

売主のAさんは、所有マンションを売りに出すために仲介業者を探していました。

M不動産は、相場の3,000万円よりも高い3,500万円という査定額を提示してきました。

「Aさんの物件なら3,500万円で売れると思います!ぜひ当社にお任せください!」と担当者は自信満々です。少しでも高く売りたいAさんは、M不動産と専任媒介契約を結びました。

契約後すぐに、内覧の申し込みがあったと連絡がありました。Aさんは担当者と内覧に対応しましたが、契約には至らず、その後内覧の申し込みは途絶えました。

M不動産はレインズに物件情報を掲載せず、他の不動産業者からの問い合わせにも「申し込みが入りました」などと理由をつけて断り続けました。

内覧の申し込みがなくなり、Aさんは次第に不安を覚えます。

その間も他の不動産業者からの問い合わせを断り続け、物件価格を相場の3,000万円まで値下げしたタイミングで、M不動産が自ら探してきた買主に物件を紹介し、売買契約が成立しました。

結果、M不動産は両手仲介に成功し、2倍の利益を得ました。

囲い込みは法的責任を問われる?

現状、日本には両手仲介を禁止する法律はありません。

  • 詐欺罪: 依頼者(売主)をだます行為
  • 背任罪: 任務を背いて依頼者(売主)に損害を与える行為

ケースによって罪名は異なりますが、いずれにしても依頼者にとって不利益となる行為は、不動産業者の法的責任を問われる可能性があります。

不動産業者の利益追求のためだけに行われる悪質な囲い込みには、売主も強い姿勢で立ち向かうことが大切です。

囲い込みされている場合の対処方法

売主にとってデメリットばかりの「囲い込み」。

実際に囲い込みされてしまった場合には、以下の対処法を検討しましょう。

すぐに仲介業者を変更するのがベスト

もし業者が解約に応じなくても、焦る必要はありません。

仲介契約の有効期間は原則「3ヶ月」なので、契約が切れるまで待ちましょう。

囲い込みだと言い切れないけれど、不信感がある場合には、仲介業者としっかり話し合うことも大切です。

疑問や不安が解消されて、囲い込みの心配がなくなれば引き続き依頼し、そうでなければ契約を解消することをおすすめします。

囲い込みをしない仲介業者を探す

さまざまな業者を比較しながら、囲い込みをしない仲介業者を探しましょう。

都心部に住んでいるのなら、囲い込みの心配がない「SRE不動産」がおすすめです。

SRE不動産は、ソニーグループが運営する不動産サービスで、以下の特徴を掲げています。

  • 両手仲介をしない
  • 囲い込みをしない
  • 物件情報を広く流通させる

SRE不動産は囲い込みの心配がない上、物件情報を広く流してくれるため、購入検討者の目に触れる機会が増えます。

その分、売却の可能性も増えるので、売主にとってはとてもメリットが大きいです。

エリア内に住んでいる人は、ぜひ検討してみましょう。

SRE不動産の公式サイトはこちら

信頼できる業者がいない場合は「一般媒介」も検討

調べてみても信頼できる仲介業者がいない場合には、専任媒介ではなく、一般媒介も検討してみましょう。

成果報酬で動く不動産業者にとって、一般媒介は仲介手数料を得られる確率が下がるため、あまりやる気の出る契約ではありません。

しかし一般媒介には、市場の反応が見られるメリットがあります。

広く物件情報を流して市場の反応を見つつ、その過程で信頼できる業者がいれば、専任媒介に切り替えるのもよいでしょう。

よくある質問

両手仲介について、よくある質問をまとめました。不動産業者選びの参考にしてください。

大手の不動産会社なら安心できるの?

大手の不動産会社だからといって、両手仲介の心配がないわけではありません。

下記の表は、公的財団法人不動産流通促進センターが公表している不動産流通データ(2018〜2020年)をもとに、大手不動産会社の「両手率」を独自にまとめたものです。

会社名片手件数両手件数両手率
三井不動産リアルティネットワーク44,04280,96765%
住友不動産ステップ28,35584,06175%
東急リバブル36,34340,07452%
野村不動産グループ17,1469,85236%
三菱UFJ不動産販売10,4585,99736%
三井住友 トラスト不動産14,4749,02338%
みずほ不動産販売8,4533,95232%
大京穴吹不動産10,28612,40355%
大成有楽不動産販売 グループ7,3464,83540%
大和ハウスグループ9,5031,96917%
住友林業ホームサービス6,1146,67652%
スターツグループ3,3943,50551%
近鉄不動産3,3679,22273%
東宝ハウスグループ5,8677,94058%
日本土地建物販売931949%
東京建物不動産販売2,9391124%
長谷工リアルエステート4,1761,88031%
ポラスグループ ・中央住宅2,5094,40664%
小田急不動産21201,84046%
ナイス175438618%
朝日住宅1,6701,30944%
京王不動産1,10996547%
相鉄不動産販売5841,35670%
京急不動産87640832%
センチュリー21 グループ33,76245,44157%
大手不動産会社両手率

しかし、もともと大手の不動産会社は、「売主」「買主」ともに多くの顧客を抱えているので、中小規模の不動産会社と比べて両手率が高くなるのは、ある程度は仕方がないともいえるでしょう。

あくまでも参考データとして、比較材料の一つにしてください

両手仲介するところはすべて悪質業者?

「両手仲介=悪質業者」とは言い切れません。

例えば、売主が依頼したA不動産の顧客の中に、条件がぴったり合う物件を探している買主がいたとします。物件価格の値下げも必要なく、即時購入希望の買主です。

この場合、売主・買主どちらにとってもメリットが大きいため、A不動産は売主と買主を引き合わせるでしょう。

このように、結果として両手仲介になるケースもゼロではありません。

まとめ

仲介手数料を二重取りする「両手仲介」。悪質な不動産業者は売主の不利益になる「囲い込み」をして、自社の利益だけを追求します。

もしも、囲い込みをされていると判断した場合は、遠慮することなく仲介業者を変更しましょう。

囲い込みをしない業者を見極めるのは簡単ではありませんが、多くの仲介業者を比較しながら、理想的な不動産売買を目指しましょう。

築50年を超えたマンションのリスクと対策について徹底解説

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近年、「築古マンション」についてさまざまな議論がなされています。

日本で最初の民間向け分譲マンションは1956年に竣工したとされており、最も古いマンションは築70年程度になります。

問題を抱えたマンションのことを「負の資産」である「負動産」と呼ぶようにもなりました。

本記事では、築40年から60年を経過したマンションに関するリスクと、それに備えるための対策について詳しく解説していきます。

  • 築古マンションを所有することのリスク
  • 売却するためにはどうすればいいか?
  • 住み続ける場合はいつまでが限界か?

といった点について、詳しく解説します。

築古マンションを保有するリスク・注意点

マンションは保有しているだけで毎月の管理費や修繕積立金といったコストが発生します。

特に「親から相続したマンション」や「現在誰も住んでいないマンション」などは、早めに売却を検討したほうがよいでしょう。

実際に市場では、築古マンションが1年や2年売れ残ることも珍しくありません。

築古マンションの売却はますます難しくなる

築古マンションの売却が難しくなっていく理由の一つとして、日本の人口減少が挙げられます。

少子化の影響により、住宅の空き家率は年々上昇しており、近い将来、日本に存在する住宅の30%以上が空き家になるとの予測もあります。

また、築古マンションでは老朽化に伴う設備の不具合が増えてきます。

こうした問題を修繕し、一定の居住性を確保しなければ、買い手や借り手を見つけることは困難です。

結果として、「売りたくても売れない」「貸したくても修繕費がかかる」という状況に陥り、身動きが取れなくなるケースも多くなっています。

修繕費の増加と固定資産税の負担

築年数が経過するほど、管理費や修繕積立金の負担が増大します。

築40年を超えると、管理費と修繕積立金だけで月3万円程度かかるケースも珍しくありません。

さらに、物件価格が安くなったとしても、毎月の維持費が高額になるため、購入希望者が敬遠しがちです。

売却を検討する際には、単に物件価格だけでなく、維持費が買い手にとって負担になることを考慮しなければなりません。この点を見落とすと、売りに出してから後悔するケースが多く見られます。

相続した築古マンションが「負の遺産」になる可能性

「売りたくても売れない」「貸したくても修繕費がかかる」といった問題を抱えた物件は、近年「負動産(ふどうさん)」と呼ばれるようになりました。

築古マンションを相続した場合、相続税の負担はそれほど大きくないかもしれません。しかし、維持費や管理費の負担が発生するため、相続人にとって不要な資産となる可能性が高いのです。

さらに、「自治体に寄付すれば良い」という考えも現実的ではありません。

近年の空き家問題を背景に、「不要な築古マンションを無料で寄付したい」と申し出ても、受け入れてもらえるケースはほとんどないのが現状です。

築古マンションを売る方法は?

築古マンションを売却するための具体的な方法について考えていきましょう。

まず、分譲マンションの資産価値について確認することが重要です。

築年数が経過するごとに、マンションの販売価格は下記のように減少していきます。

築年数販売平均価格早期成約率
築0~5年5,619万円23.3%
築6~10年4,885万円31.9%
築11~15年4,391万円26.1%
築16~20年3,941万円25.8%
築21~25年2,846万円18.6%
築26~30年1,787万円13.5%
築31年~1,835万円12.6%
※首都圏の不動産流通市場の2019年データ参照

また、早期成約率も大幅に低下するため、売却には長期間を要する可能性があります。

築古マンションは維持費だけでも大きな負担となるため、売却期間が長くなるほど持ち主にとってのリスクも増加します。

もし、できるだけ早く売却したい場合は、以下の2つの方法が考えられます。

  1. 最安値まで下げて早期売却を狙う
  2. 買取専門業者に直接売却する

それぞれの方法について詳しく解説していきます。

最安値まで下げて早期売却を目指す

もっとも単純な方法は、「最安値まで下げる」ことです。ただし、これは「周辺の競合物件と比較して最安値にする」という意味になります。

同じマンションや近隣に同条件の中古マンションが売りに出ている場合、それらの販売価格を徹底的に調査し、最安値で売却することで、早期成約を目指す方法です。

100万円や200万円程度の価格差では、室内の状態によって購入希望者の判断が変わる可能性があります。そのため、もっと大きく「明確に安い」と感じられる価格を設定することが大切です。

「安く売るのは損では?」と感じるかもしれませんが、売れないまま1年、2年と時間が経つと、その間の維持費が負担となるため、思い切って安値で早期売却した方が精神的にも経済的にも負担が少なくなります。

ただし、築古マンションは値下げ交渉されることも多いため、あらかじめ下限価格を決めておくことが大切です。

価格設定をする際には、インターネットの不動産ポータルサイトを活用すると便利です。

例えばリクルートが運営する国内最大級の不動産サイト「SUUMO」や、不動産大手6社が運営する「すまいvalue」、NTTデータが運営する「HOME4U」といったポータルサイトを使えば、机上の売却査定(※)は簡単に調べられます。

築古物件の場合、会社によって査定額が大きくブレることがあるので、なるべく複数の会社に机上査定を依頼して、相場を確認しましょう。

最低でも3社、できれば5社程度の査定を比較することで、信頼できる相場価格を把握できます。

査定は無料でできるので、「まだ売却は先」と考えている場合でも、早めに相場を確認しておくことをおすすめします。

※大手企業が運営する査定比較サイト
・SUUMO(リクルート)
・すまいvalue(大手6社協同運営)
・HOME4U(NTTデータ)

※机上査定とは
立地や築年数などからおおまかに算出した査定額。実際に家を見ているわけではないので、目安の金額です。

不動産買取業者に直接売却する

もうひとつの方法は、不動産買取専門業者に直接売却することです。

※いえカツLIFEより画像引用

買取業者の多くは、リフォームを施した上で再販売することを目的としているため、築古マンションでも買い取ってくれる可能性があります。

また、業者に直接売却することで、以下のメリットがあります。

業者買取のメリット

  • 現金化が早い(1~2週間程度で売却可能)
  • 仲介手数料が不要
  • 契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)のリスクがない
  • 購入希望者の内覧対応が不要
  • 周囲に知られずに売却できる

一方で、業者買取にはデメリットもあります。

最大のデメリットは、一般の売却価格の7割程度の価格になることです。

この点をどう判断するかは、売却スピードと価格のバランスを考慮する必要があります。

築古マンションは維持費がかかるため、売却が長引くよりは、早期売却を優先する方が合理的な場合もあります。

売却時に多くの人が大変だと感じるのが「買い主候補の内覧対応」ですが、業者買取であればこも不要です。

総合的に考えると、

  • まずは最安値で売却を試みる
  • 一定期間売れなければ買取業者に依頼する

という流れが、もっとも確実な方法です。

通常の売却を依頼する場合は、先ほど紹介した「すまいvalue」や「HOME4U」などのポータルサイトを活用すると安心です。

一方で、直接買取業者を探す場合は、「いえカツLIFE」などの買取業者比較サイトを利用すると便利です。

対応地域が関東のみと限られているのがネックですが、該当するエリアに住んでいるのであれば、一度査定を取ってみるのがよいと思います。

対応地域外の場合は、多少手間はかかりますが、不動産買取を行っている会社に直接連絡して査定を依頼してみましょう。

買取業者については「マンション買取業者の選び方は?」のページでいくつか紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

売らない場合はいつまで住めるのか?

築古マンションを売却しない場合、「いつまで住むことができるのか?」という疑問を持つ方も多いかと思います。しかし、現時点では明確な答えはありません。

ただし、物理的には100年から120年ほどがRC造マンションの限界とする説もあります。

しかし、日本にはまだ築100年を超えるマンションが存在しないため、これはあくまで理論的な推測の域を出ません。

適切な管理と修繕計画が寿命を左右する

マンションの寿命は、管理体制や修繕の計画によって大きく左右されます。

過去に適切な大規模修繕工事が行われたマンションであれば、将来の修繕計画も立てられている可能性が高いでしょう。

計画的な修繕が行われていれば、急激な修繕積立金の増額を避けることができ、さらに建て替えの可能性についても事前に把握することができます。

将来的に建て替えの計画がある場合、所有者がどの程度の負担をすることになるのかを確認しておくことが重要です。

その負担額によっては、売却を検討する必要が出てくるかもしれません。

築50年、築60年のマンションが倒壊するリスクは?

1981年に現在の耐震基準が施行されたため、それ以前に建てられたマンションは旧耐震基準に従って建設されています。

この旧耐震基準と新耐震基準は、中古マンションの価値を判断する際の重要な要素となっており、当然ながら資産価値にも影響を与えます。

例えば、1981年に建築されたマンションは2021年には築40年になります。

老朽化による自然劣化が原因でマンションが倒壊する可能性は低いですが、地震によって倒壊のリスクが高まることは否定できません。

旧耐震基準と新耐震基準の規定ついては、下記のようになっています

基準中規模地震(震度5強程度)大規模地震(震度6~7程度)
旧耐震基準倒壊しない規定なし
新耐震基準軽微なひび割れにとどめる倒壊しない

旧耐震基準のマンションでも、耐震リフォームを実施している場合はリスクが軽減されます。しかし、東京都の調査によると、旧耐震基準のマンションの94.1%が耐震補強未実施というデータもあります。

特に、南海トラフ地震など大地震のリスクが指摘されている地域に住んでいる場合は、今後のリスクを考慮して早めに住み替えを検討するのも一つの選択肢です。

よくある質問

築古マンションの売却や維持管理について、その他によくある質問をまとめました。

もう不要なので処分したいが、どうすればいい?

マンションを不要と感じても、処分するのは簡単ではありません。

所有権を放棄することはできず、無償で寄付しようとしても受け取ってもらえないケースがほとんどです。

急いでいない場合は、一般市場で買い手を募集することもできますが、築古マンションは売却に時間がかかることが多いです。

売却活動を始めて3ヶ月経っても反響がない場合は、買取業者に依頼することをおすすめします。

築古マンションが建て替えになったケースはある?

日本初の分譲マンションとして知られる新宿区本塩町の「四谷コーポラス」は、老朽化による建て替え工事のため、2017年に解体されました。

その後、「アトラス四谷本塩町」として2019年に新築マンションとして生まれ変わりました。

R.E.portより引用

この建て替えが実現した背景には、

  • 新宿区という好立地であったこと
  • 管理組合が長年しっかりと運営されていたこと が挙げられます。

さらに、建て替えの費用の多くは所有者が負担しなければならず、1,000万円以上の自己負担となるケースもあります。

そのため、建て替えには反対意見も出やすく、実際に建て替えが行われるケースは非常に少ないのが現状です。

まとめ

築古マンションは、将来的に「負の資産」になる可能性が高く、時間が経つほど売却の難易度も上がります。

そのため、何か特別な理由がない限りは、早めの売却や対策を講じることが望ましいでしょう。

すぐに売る予定がなくても、現在の資産価値を把握しておくことは重要です。家族と相談し、一度売却時の査定を受けておくことをおすすめします。

そのため、早めに売却査定を行い、不動産会社と面識を持っておくことで、いざというときにスムーズに行動できるよう準備しておくとよいでしょう。

査定は無料で行えるため、今すぐ売る予定がなくても試してみる価値は十分にあります。

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