家やマンションの相続税はいくら?兄姉で意見が合わない時の対処法
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親や兄弟から不動産を相続した際、どれくらいの費用や税金がかかるか気になる方は多いでしょう。
マンションのように「土地を持たないケース」と、一戸建てのように「土地付きのケース」では注意点が異なります。
今回は、家やマンションを相続した際の費用や税金、トラブルの対処法について詳しく解説します。
不動産を相続したときの費用と税金

まず、家やマンションを相続する際にかかる費用や税金について説明します。
これらの費用を事前に把握しておいて、相続手続きがスムーズに進められます。
マンションを相続するときにかかる費用
マンションなどの不動産を相続する場合の費用としては、以下のようなものがあります。
戸籍謄本や住民票などの取得費用 | 3,000~5,000円※相続人の数による |
相続人全員の印鑑証明の取得費用 | 1,000~2,000円※相続人の数による |
不動産の名義を変更するための手数料 | 30,000~70,000円 |
一番高額になるのが、不動産の名義を変更してもらうため司法書士に支払う手数料です。
この手数料は司法書士ごとに異なるため、費用を抑えたい場合は、複数の司法書士事務所に見積りを依頼すればよいでしょう。
マンションを相続したときにかかる税金
マンションなどの不動産を相続した場合の税金としては、以下があります。
登録免許税 | 固定資産評価額の0.4% |
相続税 | 相続財産3,600万円以下は免除 |
登録免許税とは?
登録免許税は、不動産の名義変更(相続登記)を行う際に必要となる税金です。
例えば、固定資産評価額が1,000万円のマンションを相続した場合、0.4%の軽減が適用されるため、登録税免許は40,000円となります。
相続税の基礎控除とは?
相続税は、遺産の総額が基礎控除額を超えた場合にのみ発生します。
基礎控除の計算式は以下のとおりです。
📌基礎相続額 = 3,000万円+600万円 × 法定相続人の人数
例、相続人が3人(配偶者+子ども2人)の場合、基礎控除額は4,800万円となります。
そのため、遺産総額が4,800万円以下であれば、相続税の支払いは不要です。
相続したマンションを売却するときにかかる税金
相続したマンションを売却する場合、「譲渡所得税」などの税金が発生する可能性があります。
主な税金の種類は以下のとおりです。
印紙税 | 5,000~30,000円 |
登録免許税 | 固定資産評価額の0.4% |
譲渡所得税と住民税 | 譲渡益の20%~39% |
印紙税は売買契約書に添付する印紙代のことで、売買価格によって印紙の金額が異なります。
売買価格 | 印紙代 |
---|---|
500万円以上 1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円以上 5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円以上 1億円以下 | 30,000円 |
譲渡所得税と住民税に関しては、すべての売買物件に該当するわけではなく、売却することで利益が発生した場合のみ、税金で納めることになります。
例えば両親が3,000万円で購入したマンションを相続し、その後2,000万円で売却したとします。
これだと1,000万円の赤字となるので利益は出ておらず、譲渡所得税の対象とはなりません。
その逆のパターンとして、2,000万円で購入したマンションを相続後に3,000万円で売却した場合、1,000万円の譲渡益が発生しているので、この1,000万円に対して譲渡所得税と住民税が課せられることになります。
譲渡所得税と住民税は、該当不動産の所有期間によって税率が異なります。(※保有期間は相続してからではなく、被相続人が不動産を取得してからの年数で計算します。)
保有期間 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
短期譲渡所得※5年以下 | 30% | 9% |
長期譲渡所得※5年以上 | 15% | 5% |
その他、仲介業者に支払う仲介手数料も発生するので注意しましょう。
相続でよくある失敗例とその対策
相続した不動産を巡って、相続人同士の意見が合わないケースや、手続きを誤ることでトラブルが発生することがあります。
ここでは、特に多い失敗例とその対処法について解説します。
不動産名義人の問題

※三次相続の例
共有名義での相続はむしろのが理想です。
✔ 共有名義の不動産は、将来的に売却が困難になる
✔ 相続人の一人が他界した場合、その相続人の子ども(孫世代)も権利を持つため、手続きが複雑化
📌対策:相続時に単独名義にするか、早期に共有者間で売却計画を立てる
相続した不動産の登記漏れ、接道がない

せっかく相続した不動産ですが、よく調べてみると不動産登記に問題があるケースも多いです。
✔ 増築やリフォーム部分が登記されていないと、売却時に問題が発生
✔ 「接道義務」を満たしていなければ、新築の建設ができるず、売却が正当になる
📌対策:相続後に不動産登記を専門家に確認してもらい、必要なら登記を修正する
親が購入した不動産の購入価格が不明

この場合、物件の売却価格の5%を購入費として計算するのですが、2,000万円で売れと仮定しても購入費は5%なので100万円でしかありません。
こうなると1,900万円が譲渡益となり、支払う税金の負担が大きくなります。
✔ 購入価格が不明である、売却時に不利な税計算となる(取得費が不明な場合、売却価格の5%で計算される)
✔ 結果として、税負担が増えてしまう
📌対策:事前に親が購入した際の資料を整理し、購入価格を明確にしておく
相続した家やマンションの売却

ここでは相続した家やマンションを売却するポイントについて解説していきたいと思います。
相続した不動産の売却における基本的な考え方
相続した家やマンションを売却する際は、資産価値や市場動向を総合的に判断する必要があります。
特にマンションの場合は、都心部を中心に中古物件の価格が上昇する傾向も見られますが、その動向は限られた条件の物件に集中しています。
以下に、売却を成功させるための重要なポイントを詳しく解説します。
早期売却の重要性
「売れるうちに売却する」ことが鉄則です。
戸建てでもマンションでも、相続した不動産を売却する意思がある場合は、できるだけ早期に売り出すことが推奨されます。理由は以下の通りです。
- 築年数による資産価値の下落: 不動産は築年数が経過するほど価値が下がり、特にマンションは築年数が30年を超えると買い手の対象から外れることが増えます。
- 市場動向の不確実性: 都心部の中古マンション価格が上昇している場合でも、それは築浅かつ駅近など条件が非常に良い物件に限られます。築28年のマンションが2年後に築30年になるだけで、購入希望者の選択肢から外れてしまうリスクがあります。
相続人全員の売却意思の確認
売却を進めるためには、相続人全員の合意が必要です。
- 合意がない場合のリスク: 相続人のうち1人でも反対すれば売却は難航し、最悪の場合は売却自体が不可能になります。
- 事前の話し合いが重要: 名義人が存命中から相続後の不動産について話し合うことを推奨します。もし反対者がいる場合は、名義人から直接説得してもらうことでトラブルを防げます。
リフォームして売却するか、そのまま売却するか
築年数が経過した物件の場合、「リフォームしてから売却した方が良いか?」という相談が多くあります。それぞれの選択肢のメリットとデメリットを整理します。
【そのまま売却する場合】
- メリット: リフォーム費用がかからず、すぐに売却活動を開始できる。
- デメリット: 築年数が古い場合は内見時にマイナス印象を与える可能性がある。
【リフォームして売却する場合】
- メリット: 購入検討者に良い印象を与え、売却までの期間が短縮されやすい。
- デメリット: リフォーム費用を売却価格に反映させにくく、結果的に損失が出る場合がある。
リフォーム費用と売却価格の関係性
一般的に、リフォーム費用を売却価格に完全に上乗せするのは難しいと言えます。
500万円のリフォーム費用に対して上乗せできるのは200万円から300万円程度が一般的です。
そのため、まずはリフォームしない状態で売りに出してみて、反応を見ながらリフォームを検討するのが現実的な選択肢となります。
マンションの主なリフォーム費用を掲載しておきますので参考にしてください。
リフォーム箇所 | 費用 |
---|---|
システムキッチン(新品に交換) | 70~150万円 |
ユニットバス(新品に交換) | 100~200万円 |
トイレ(最新型に交換) | 25~35万円 |
壁紙 | 50~70万円 |
フローリング張替え | 50~80万円 |
間取りの一部変更 | 100~300万円 |
土地の相続「調整区域」や「農地」

土地の相続は、戸建てやマンションと同様に発生するケースが多く、特に更地や農地を相続する場合には注意が必要です。
ここでは、市街化区域、調整区域、農地を相続した場合のポイントや、売却および活用方法について詳しく解説します。
1. 市街化区域の土地
市街化区域とは、都市計画法により住宅やアパートなどの建築が許可されているエリアです。
- 特徴: 住宅地としての需要が高く、流動性も高いため売却しやすいです。
- 対応: 相続後は不動産会社に相談すればスムーズに売却手続きが進められます。
- 価格: 市街化区域は立地が良いため、資産価値も高く安定しています。
2. 市街化調整区域の土地
市街化調整区域は、原則として建築が制限されているエリアで、資産価値が低くなる傾向があります。
- 課題:
- 建物の建設が制限され、買主が見つかりにくい。
- 市街化区域に比べて、資産価値が10分の1以下になることもあります。
- 対応:
- 相続した土地が市街化区域か調整区域かを調査します。
- 調査方法は、最寄りの役所や不動産会社で確認できます。
- 市街化調整区域マップはインターネットでも閲覧可能です。
- 活用法:
- 資材置き場: 広い敷地が求められ、初期投資も少なく済みます。
- レンタルボックス: 初期投資は必要ですが、安定した収益が見込めます。
3. 農地を相続した場合

農地は、売却や転用の際に特別な手続きが必要となります。
- 農地転用の必要性: 登記上「畑」または「田」とされている場合、実際に耕作していなくても農地転用許可が必要です。
- 転用申請: 農地転用許可は所轄の農業委員会に申請します。
- 期間: 許可取得まで約2か月が目安です。
- 申請書類: 転用理由、土地利用計画書、登記事項証明書などが必要です。
4. 相続した土地の売却方法
土地売却には大きく分けて「仲介売却」と「不動産会社買取」の2つの方法があります。
- 仲介売却:
- メリット: 市場価格で売却が期待できる。
- デメリット: 売却完了まで半年から1年以上かかる場合があります。
- 不動産会社買取:
- メリット: 早急な現金化が可能。
- デメリット: 市場価格よりも2〜3割程度安くなる傾向があります。
- おすすめ: 仲介と買取を同時に依頼し、条件が良い方を選ぶのが効果的です。
5. 相続した土地の活用方法
相続した土地は売却だけでなく、収益物件として活用する選択肢もあります。
- 低コストでの活用:
- 資材置き場: 初期投資が少なく、調整区域でも実現可能。
- 駐車場: 市街地に近ければ安定収益が見込めます。
- 中〜高コストでの活用:
- レンタルボックス事業: 初期投資はかかるものの、近年人気の高い事業形態です。
- 賃貸アパート建設: 立地次第で安定した収益が見込めますが、5,000万円以上の初期費用を想定する必要があります。
- おすすめの活用:
- コンビニ建て貸し事業:
- 自社建設型: 高い賃料収入が期待できますが、初期投資は大きくなります。
- 土地貸し型: コンビニ側が建物を建設するため、初期費用は不要ですが、賃料は低めになります。
- コンビニ建て貸し事業:
いらない不動産を相続してしまったらどうする

相続した家やマンション、土地を売却しようとしても、半年経っても一年経っても買い手がつかないというケースは少なくありません。
ここでは、売りたくても売れない不動産をどのように処分するか、その方法について解説します。
不動産を寄付したい場合の現実
インターネットなどで「不要な不動産を自治体に寄付できる」といった情報を目にすることがありますが、実情としては多くの自治体が寄付を受け付けていません。理由は以下の通りです。
- 固定資産税などの維持費が発生するため: 自治体は不動産を所有することで維持費や税金を負担しなければならず、その費用は市民の税金で賄われることになります。
- 立地条件が重要: 公園や公共施設に転用できる立地であれば例外的に受け入れる場合もありますが、売れない土地は多くの場合、利活用が難しいため断られます。
このように、不動産を自治体に寄付するのは現実的な解決策ではありません。
2. 相続放棄という選択肢
不要な不動産は、相続放棄することで引き継がずに済ませることが可能です。ただし、以下の点に注意が必要です。
- 他の相続人に権利が移る: 自分が相続放棄をしても、他の家族や兄弟が相続人となり、同じ問題を抱えることになります。
- 相続財産全てを放棄することになる: 相続放棄は不動産だけでなく、預貯金や株式など他の資産もすべて放棄することを意味します。
- 家庭裁判所への申立が必要: 相続放棄は、被相続人が死亡したことを知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てを行う必要があります。
これらのデメリットを十分に理解した上で、家族全体でよく相談して判断することが重要です。
「生前贈与」と「死後相続」節税効果が高いのはどっち?

財産を承継する方法には「生前贈与」と「死後相続(遺産相続)」がありますが、税負担の観点でどちらが有利かを比較してみます。
死去した後に被相続人の遺産を分配するのが死後相続ですが、それと比較検討されるのが被相続人が存命のうちに財産を分配する生前贈与です。
生前贈与って得なの?
生前贈与とは将来相続するであろう財産を被相続人が存命中に分配する方法です。
この場合だと相続ではなく贈与になるため、贈与税が発生します。
生前贈与では以下のような税金がかかります。
- 贈与税=年間110万円までは非課税
- 登録免許税=評価額×2%
- 不動産取得税=評価額×3%
贈与税は年間基礎控除の110万円を超えると、金額に応じて税率が変わります。
200万円以下 | 10% |
300万円以下 | 15% |
400万円以下 | 20% |
600万円以下 | 30% |
1000万円以下 | 40% |
1500万円以下 | 45% |
3000万円以下 | 50% |
3000万円以上 | 55% |
このように生前贈与にはかなり高い税金が課せられることがわかります。
では死後相続と比較した場合、どれくらい納税額に違いがあるのか比較してみたいと思います。
死後相続と生前贈与を比較
- 相続税の基礎控除が大きい: 最低でも3600万円(3000万円 + 法定相続人1人あたり600万円)が基礎控除となり、多くの場合、相続税は生前贈与に比べて軽減されます。
- 登録免許税:0.4%と生前贈与よりも優遇されます。
- 不動産取得税:課税されません。
比較項目 | 生前贈与 | 死後相続 |
---|---|---|
贈与税・相続税 | 110万円/1人まで非課税 | 最低3600万円まで非課税 |
登録免許税 | 2% | 0.4% |
不動産取得税 | 3% | なし |
この比較から、税制面では死後相続が圧倒的に有利であることが分かります。
なぜ生前贈与をするのか?
税負担は死後相続が有利ですが、生前贈与にも以下のようなメリットがあります。
- 財産分配を自分の意思で決められる: 争族(相続トラブル)を未然に防ぐことができます。
- 贈与時点の評価額で計算される: 将来的な資産価値の上昇リスクを回避できます。
- 一定の節税効果がある: 年間110万円の非課税枠を活用すれば、長期的な贈与で節税効果が期待できます。
しかしながら、特に大きな財産を持っていない場合は、節税の観点からは死後相続の方が有利です。
状況に応じて、税理士や不動産の専門家に相談することをお勧めします。
よくある質問

家やマンションの相続に関して、今回紹介しきれなかった部分や、ネットなどで良く質問されている内容などをまとめてみました。
相続マンションの評価額を調べるには?

※実際に送られてくる課税明細書の一例(マンションの場合)。自治体によって様式が違う(SUUMO編集部にて作成)
相続したマンションの資産価値を知るためには、不動産評価額を確認することが重要です。
不動産の資産価値には主に以下の2種類があります。
- 売却する場合の資産価値: 将来的な財産分与の基準となるため、相続不動産が市場でどれくらいの価格で売却できるかを把握しておく必要があります。不動産会社に売却査定を依頼することで、現時点の市場価値を把握できます。
- 不動産の評価額(固定資産税評価額など): 固定資産税評価額は、固定資産税などを算出する際に用いられ、売却価格よりも一般的に低く設定されています。評価額は、毎年送付される固定資産税納付書に記載されていますので、土地と建物の評価額を必ず確認しましょう。
不動産相続のポイントを簡潔に教えてください
相続トラブルを防ぐためには、事前準備が大切です。特に以下の点を家族でしっかり話し合っておきましょう。
- 相続財産の把握: 不動産を含む資産価値を事前に査定しておくことで、財産分与や相続税のシミュレーションが可能です。
- 相続人の確認と話し合い: 相続人全員で遺産分割について事前に意見を擦り合わせておきましょう。
- 遺言書の作成: 相続トラブルを防ぐ最善策は、被相続人が存命中に遺言書を作成しておくことです。
- 相続税対策の検討: 相続税が発生するかどうかを確認し、必要に応じて税理士に相談しましょう。
遠方にあるマンションを相続したとき、誰に相談すればいいの?
遠方の不動産を相続した場合は、どの不動産会社に相談すべきか迷うことがあります。
以下を参考にしてください。
- 物件がある地域の不動産会社に相談するのがベスト: 地元の不動産会社は地域の市場動向に詳しく、適正価格での売却を進めやすいです。
- 全国展開している大手不動産会社を検討: 直接相談したい場合は、全国に支店を持つ大手不動産会社も選択肢となります。ただし、フランチャイズ形態(例:エイブルやアパマン)の場合は実質的に地元の個人店であることも多いため、サービス内容を確認しましょう。
自分の持ち分だけ売却できますか?
兄弟姉妹など複数名で共有している相続不動産について、自分の持ち分だけ売却できるかは以下の通りです。
- 法律上は可能: 共有名義の不動産であれば、持ち分だけを売却することは法律上問題ありません。
- 現実的な問題点: 持ち分だけを購入する買主は少なく、一般の不動産会社では取り扱いが難しいことが多いです。
- 解決方法: 共有名義不動産を専門とする買取業者に相談すると、持ち分売却の選択肢が広がります。
まとめ
家やマンションの相続はトラブルが発生しやすいため、事前の準備が重要です。
- 家族間で相続財産・相続人・相続税について十分な話し合いをしておくこと。
- 不動産の資産価値は売却査定と固定資産税評価額の両方を確認すること。
- 遺言書を作成しておくことで、相続トラブルを防げます。
- 遠方の物件は地元の不動産会社や大手不動産会社への相談が有効です。
- 共有名義不動産は、専門業者への相談が解決の糸口となります。
また、不要な不動産は相続放棄が可能ですが、相続確定前にしか行えないため注意が必要です。
もし相続が確定してしまった後の場合は、簡単に手放すことはできないので注意しましょう。
相続後のトラブルを未然に防ぐためにも、早めの準備と専門家への相談を心がけましょう。