家の傾きは修復可能か?リフォームや解体費用の相場とによる放置リスクを詳しく解説
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家が傾いてしまうと、資産価値の大幅な低下だけでなく、居住者の健康にも悪影響を及ぼす恐れがあります。
特に、傾きによるめまいや体調不良などの健康被害は深刻な問題となり得ます。そのため、早期に原因を特定し、適切な対策を講じることが重要です。
本記事では、家が傾く原因、修繕方法、費用相場に加え、傾いた家の売却についても詳しく解説します。
家が傾く原因と調べ方

建物が傾いてしまう原因として、以下のように2つのケースが考えられます。
- 地盤沈下や土地の液状化が原因の場合
- 建物の劣化やシロアリが原因の場合
それぞれについて解説します。
地盤沈下や土地の液状化が原因の場合

地盤が弱い土地に十分な補強をせず建物を建てると、建物の重みで地盤が沈み、家が傾くことがあります。
通常、住宅会社が建設前に地盤調査を実施しますが、弱い地盤には地盤補強工事が不可欠です。
また、地震の際に発生する液状化現象も傾きの原因となります。
液状化は、地下水が地表に噴き出し地盤が緩む現象で、特に埋立地や河川付近で起こりやすいとされています。

【修繕方法】
液状化などによって傾いた場合は、アンダーピニング工法(強固な地盤層まで杭を打ち込む補強工法)が有効です。この工法により、家全体を安定させ、再沈下を防ぎます。
アンダーピニング工法の詳細は、次の「家の傾きを修理する方法と費用相場」でまとめています。
建物の劣化やシロアリが原因の場合
土地に問題がなくても、長期間の劣化やシロアリ被害により柱や土台が腐食し、家が傾くことがあります。
特に築年数が古い家は、木材が腐朽して強度が低下し、傾斜が発生するケースが多いです。さらに、シロアリ被害は柱の耐久性を著しく低下させ、傾きを引き起こします。
【修繕方法】
建物の劣化やシロアリ被害が原因の場合は、比較的費用を抑えられる土台上げ工法が有効です。この工法では、ジャッキなどで建物を持ち上げ、傷んだ土台部分を補修・交換することで傾きを修正します。
傾きの調査をプロに依頼する場合の費用
リフォーム業者に相談する前に専門の業者に調査してもらい、家の傾きの原因と対策方法について説明を受けることをおすすめします。
専門業者に調査を依頼することで、傾きの原因や対策方法を詳しく知ることができます。特に、ホームインスペクション(住宅診断)は包括的な診断を提供するためおすすめです。
- 費用相場: 7万円~15万円(30坪~40坪の一軒家の場合)
- 調査内容: 傾きの原因特定、シロアリ被害確認、基礎や外壁など建物全体の状態診断
費用はかかりますが、早期発見・早期対策により、将来的な大規模修繕のコストを抑えることができます。
自分で傾きを調べる方法
プロに依頼する前に、自分で簡易的に傾きを調べる方法を紹介します。
- ビー玉やゴルフボールを転がす: 床に置いたビー玉が自然に転がれば傾きのサインです。
- スマホアプリを利用する: 傾斜角度を測定できるアプリが手軽で便利です。
- 水平器を使用する: 最も正確な方法ですが、100円ショップのものは精度が低いため、精度±2mm程度の水平器をホームセンターで購入するのがおすすめです。
家の傾きを修理する方法と費用相場

傾いてしまった家も、適切な修復工事を行うことで傾きを直すことが可能です。
修復工事は、家が傾いた原因や傾きの度合いによって施工方法が異なるため、状況に合った最適な方法を選ぶことが重要です。
修復工事の主な方法は以下の3通りです。
- 土台上げ工法
- ダブルロック工法
- アンダーピニング工法
それぞれの特徴を解説します。
土台上げ工法

土台上げ工法は、傾きの程度が比較的軽い場合に用いられる方法です。
建物の基礎部分と土台部分を切り離し、油圧ジャッキなどで持ち上げて水平を調整した後、できた隙間をモルタルなどで埋めます。
工期と費用目安
- 工期:1週間〜10日程度
- 費用相場:100万円〜200万円
メリット
- 比較的費用が安く、短期間で工事が完了する
- 騒音、振動、埃が少なく、住みながら施工可能
デメリット
- 地盤の補強は行わないため、再度沈下するリスクがある
- 応急処置的な側面が強く、長期的な安定性は低い
ダブルロック工法

ダブルロック工法は、地盤に特殊な薬液を圧力注入して強固な支持地盤を作り出す工法です。
薬液は収縮しにくいため、将来的な再沈下のリスクが抑えられます。
工期と費用目安
- 工期:3週間〜1ヵ月程度
- 費用相場:300万円〜500万円
メリット
- 傾き修正と同時に地盤補強ができる
- 1mm単位での精密な調整が可能
- 新たな支持地盤をつくることで効果が長期間持続する
デメリット
- 比較的新しい工法であるため、施工品質が業者によって差が出やすい
- 土台上げ工法に比べて費用が高額
アンダーピニング工法

アンダーピニング工法は、建物の基礎の周囲を掘削し、鋼管杭を地中深くの支持層まで打ち込み、建物を新たな基礎で支える工法です。
大規模な施工が必要ですが、長期的な安定性が高いのが特徴です。
工期と費用目安
- 工期:4週間〜6週間程度
- 費用相場:500万円〜800万円(支持地盤の深さにより大きく変動)
メリット
- 再沈下のリスクが低く、安定性が高い
- 軟弱地盤でも対応可能
- 施工後の保証が充実していることが多い
デメリット
- 施工費用が高額
- 工期が長く、大規模な工事が必要
費用に関しては強固な支持地盤がある深さによって大きく変わってくるので、リフォーム会社をしっかりと比較検討することをおすすめします。
自分で家の傾きを直すことは可能か?
家の傾き修正はプロでも高度な技術が必要な作業であり、特にダブルロック工法やアンダーピニング工法はDIYでは不可能です。
ただし、費用を抑えたい場合は、土台上げ工法を応用する形で自力で修正を試みることはできます。
しかし、その場合でも以下の課題があります。
- 必要な機材: 油圧ジャッキを複数台(約10台)用意する必要がある
- 技術: 正確な水平調整には専門的な知識が必要
- 大掛かりな工事: 床を剥がすなど大規模な作業が伴う
さらに、地盤に原因がある場合はDIYでは解決できず、再び傾くリスクが高いため、基本的には専門業者に依頼するのが安全です。
保証や保険を活用する方法
新築時に付帯する地盤保証は、平均で10年間の保証が一般的ですが、30年間保証を提供する住宅会社もあります。
保証期間内での傾き発生であれば、保証を利用して無償で修復できる場合があります。
保険適用
- 地震保険: 地震による傾きは保険金の支払い対象となることが多い
- 火災保険: 雪害や風害など、契約内容により自然災害が原因の傾きも補償される可能性があります
傾いた家を放置するとどうなるのか

傾いてしまった家を放置すると、建物全体の構造に深刻な影響を及ぼします。
建物の重みによるさらなる傾斜の悪化に加え、わずかな地震でも倒壊のリスクが大幅に高まります。
特に、基礎部分が弱くなった場合は、地震の揺れに耐えきれず、一気に崩れてしまう危険性があります。
倒壊してしまう危険性はあるか?
地盤沈下が原因による家の傾きであれば、少しずつ沈下は進み、家の傾きはどんどんひどくなっていくだけです。
傾きがひどくなると、外壁などにも亀裂が入り、そこから雨漏りを起こす可能性もありますし、最終的には建物が倒壊してしまう恐れもあります。
体調不良や健康被害につながる可能性は?
傾いた家での生活は、人体にさまざまな悪影響を及ぼします。
建物の傾斜により平衡感覚を司る三半規管が乱され、自律神経が不調をきたします。
その結果、頭痛、めまい、吐き気、食欲不振、不眠などの症状が現れることがあります。 実際に、わずか数分間傾いた家に滞在しただけで、頭痛や吐き気を感じる人もいるほどです。
症状の出方には個人差があり、徐々に体調が悪化する場合もあるため、家族が体調不良を訴えたら、すぐに調査や修繕を検討する必要があります。
傾いた家は売却できるのか?
傾いた家であっても、売却することは可能です。
ただし、そのままの状態では建物の評価は大幅に下がり、売却までに時間がかかることが予想されます。
売却のポイント
- 土地の価値を重視する買い手を探す: 建物ではなく土地を目的とする買い手もいるため、まずは不動産業者に相談してみましょう。
- 複数の不動産業者に相談: 1社や2社だけでは買い手が見つかりにくいため、不動産大手6社が運営する「すまいvalue」や、「SUUMO」などのポータルサイトを活用し、広範囲に買い手を探すのが効果的です。
- 買取専門業者に依頼: 一般の売却で買い手が見つからない場合は、買取専門業者に査定を依頼する選択肢もあります。市場価格より安くなりますが、現金化が早く、スムーズに売却できます。
詳しくはこちらの「マンション買取業者の選び方は?」の記事で解説しているので参考にしてください。
解体を選択する場合の費用相場
傾いた家を売却せず、解体して更地として売り出す選択肢もあります。
解体費用の目安
一般的な木造2階建て住宅(40坪程度)の場合、解体費用は以下の通りです。
- 1坪あたりの相場: 約5万円
- 40坪の解体費用: 約170万〜200万円
近年はコロナ禍や国際情勢の影響により、建設関連の費用が高騰しています。そのため、インターネットで見かける坪あたり3万円といった安価な費用は現状に即していない可能性があります。
解体費用を抑えるポイント
- 複数の解体業者から相見積もりを取る: 費用やサービス内容を比較し、最適な業者を選びましょう。
- 補助金や助成金の確認: 自治体によっては、解体費用の一部を補助してくれる場合があります。
傾いた家を放置することで発生するリスクは多岐にわたります。安全性と資産価値を守るためにも、早めの対応を心がけましょう。
解体費用については「家の解体費用は?更地に戻す方法を解説」で詳しく解説しているので参考にしてください。
よくある質問

家の傾きに関して、今回紹介しきれなかった部分や、ネットなどで良く質問されている内容などをまとめてみました。
3センチ程度の傾きは問題ないって本当?
家の傾きが10/1,000というのは、1mあたり1cm傾いていることを意味します。
この傾きは、角度に換算すると約0.57度です。
一般的に、傾きが0.6度を超えると人体に悪影響が出る可能性があるとされています。そのため、3cmの傾き(10/1,000相当)は、修繕を検討すべきレベルです。
家の傾きはどの程度までが許容範囲?
- 新築住宅の場合:傾きの許容範囲は3ミリ以下とされています。
- 中古住宅の場合:許容範囲は6ミリ以下が目安です。
人体への影響を考慮すると、傾きが10/1,000(1mあたり1cm)は限界の目安ですが、理想としては6/1,000(1mあたり6mm)以下が望ましいです。
スマートフォンアプリで家の傾きを測定できる?
- iPhoneの場合:「コンパス」アプリが標準でインストールされており、水平測定機能を利用して傾きを確認できます。
- Androidの場合:無料の傾斜測定アプリが複数提供されており、手軽に測定が可能です。
ただし、スマホアプリは簡易的な測定ツールであり、計測精度はあまり高くありません。そのため、あくまでも目安程度と考え、正確な診断は専門業者に依頼するのが安心です。
まとめ
傾いてしまった家を放置すると、最悪の場合、倒壊する危険があります。
早めに専門家に相談し、原因の特定と対策を講じることが大切です。
住んでいない家の場合の選択肢
- 早期売却:傾きが悪化する前に、不動産買取業者に売却する方法があります。
- 傾きが軽微な場合は、そのままの状態で買取専門業者に相談するのが最も手軽です。
- 査定は無料のことが多いため、「すまいvalue」や「SUUMO」などの一括査定サービスを活用して、相場を把握するのがおすすめです。
- 更地にする選択肢:
- 傾きが深刻な場合は、建物を解体して更地にしてから売却を検討する方が買い手がつきやすくなります。
できる限り早めに査定を受け、売却や修繕などの対応方針を決定することをおすすめします。